シネマヴェーラ渋谷で「午前中の時間割り」「妖精の詩」を観ました。
羽仁進監督特集です。
「午前中の時間割り」(1972年/羽仁プロ、ATG/監督:羽仁進)
以前、シネマヴェーラ渋谷で開催された「荒木一郎特集」の時に観た事あり。
この作品、好きだなぁ。
音楽監修:荒木一郎
旅行に行っていた女子高生の玲子(シャウ・スーメイ)が戻ってきます。
玲子は同級生の下村(秦野卓爾)を訪ね、一緒に旅に出た草子(国木田アコ)が途中で死んだことを告げます。
玲子と草子は下村の8ミリを借りて旅に出ていました。
玲子(シャウ・スーメイ)と下村(秦野卓爾)は現像した8ミリを映写する事にしました。
夏休み、仲良しの玲子と草子は目的のない旅に出ました。
旅の途中で玲子(シャウ・スーメイ)と草子(国木田アコ)は海岸近くで奇妙な風船を上げようとしている青年・沖(沖至)と出会います。沖は自衛隊に失望し、自衛隊から風船の機械を持ち出し、そのまま逃げていると話します。
下村(秦野卓爾)はフィルムの中、裸で泳いでいる玲子と草子を撮影した第三者がいた事に気が付きます。玲子に対して密かに好意を寄せている下村はその事で衝撃を受けます。
玲子(シャウ・スーメイ)は郵便局で平凡に働く沖(沖至)と再会します。しかし、沖には旅先で出会った時の隠者のようなオーラはなく、玲子は沖に失望します。
後日、沖は玲子を犯そうと近づきます。しかし、危機一髪のところで玲子は下村に助けられます。
玲子と下村は草子の残したフィルムを1つの映画にしようと誓い合います。
現在である新学期の映像はモノクロで、過去である8ミリで撮影した旅の記録がカラー映像になっています。
頻繁に2つの映像は入れ替わるという斬新で面白い試みをしています。
70年代の少女のメランコリックな青春映画でもあり、実験映画でもあります。
8ミリで撮影したフィルムからは玲子と草子の無垢な雰囲気が伝わってきます。
この旅先の8ミリ映像は実際に主演の少女2人も撮影しています。
玲子を演じたシャウ・スーメイさん、美人でかわいいですね。
70年代前半は他にもTVドラマ等に出演していたみたいですが・・・。
今はどうしているのでしょうか・・・?
強烈な個性の草子を演じた国木田アコさんは何と明治の文豪・国木田独歩の曾孫。
調べみると「午前中の時間割り」くらいしか出てこない・・・。
その後、渡英。現在はフランスに在住とのこと。
ちなみに娘は何と・・・現在、モデルとして日本で活動している国木田彩良さん。
玲子と草子の同級生の下村を演じた秦野卓爾さんは朴訥とした雰囲気が良い味を出しているのですが、この方も調べても「午前中の時間割り」くらいしか出てこない・・・。
沖至さんは60年代後半から活動しているフリージャズ界の名トランぺッター。
ってか沖至さんの役名が沖ってそのまんま。
この映画は1972年という時代を感じさせる映画です。
時代の空気感がこの映画には記録されています。
これがたまらなく良いんだなぁ。
好みの分かれる映画だと思いますが、難しく考えないで感覚で観て欲しいと思います。
そして、やはり荒木一郎さんが監修した音楽が良いです。この映画の音楽はノスタルジックな雰囲気が漂っています。
荒木一郎さんがプロデュースしたメープル・リーフというグループが担当した主題歌も良いですね。
映画「午前中の時間割り」OP主題歌「草子の散文詩」メープル・リーフ
「妖精の詩」(1971年/日本ヘラルド社/監督:羽仁進)※日仏合作
音楽:ジャン・ギィユー、荒木一郎
こちらの作品も音楽を荒木一郎さんが担当しています。秀逸な音楽にも注目です。
主演の羽仁未央さんは羽仁進監督の娘。未央さんは1964年生まれ。
ということは、この映画の公開当時1971年は7歳。
ちなみに未央さんは「初恋・地獄篇」(1968年/羽仁プロ、ATG/監督:羽仁進)にも出演しています。
残念ながら2014年に50歳という若さで亡くなりました。
この映画の舞台はイタリアのサルジニア島。孤児院の子ども達の世界を脚本なしで描いています。
イタリア・サルジニア島、どこか遠い東洋の国からミオ(羽仁進)という女の子がやって来ました。ミオは孤児院に収容されます。
初めは島の言葉のわからなかったミオですが、しだいに環境に溶け込み、言葉も覚えていきます。
やがてラファエル(ラファエル・カスート)という可愛い男の子と幼い恋が芽生えます。
ラファエルの父・マルファッティ(アルフレッド・マルファッティ)はアントニオという男が不当逮捕された事に対して抗議運動を行っていました。
ある日、保母のブリジット(ブリジット・フォッセー)とマルファッティは協力して、アントニオを脱獄させます。そして、その事が原因で2人は島を追われる事になります。
幼い恋を育んでいるミオとラファエルにも別れの時が・・・。
この映画の登場人物は未央さん以外、全員外国人。それゆえ、洋画を観ている感覚です。
大人の世界も描かれていますが、あくまでこの映画は子どもの世界が中心。
始めは島の言葉がわからなかったミオですが、それでもだんだんと周りに溶け込んでいきます。
子どもの世界には国境がないのですね。
子ども達の姿が生き生きとフィルムに捉えられており、ドキュメンタリー出身の羽仁進監督の実力がいかんなく発揮された作品です。
今回観たフィルムは褪色が激しかったです。こういう事は名画座ではよくあるのですが、内容が良かっただけに残念。
フィルムの状態が良ければ、ロケ地の風景の色彩の美しさも味わえるはずだし、子ども達の姿ももっと鮮やかに心に残るはず。
というわけで、可能ならばいつかニュープリントで再見出来たら良いなぁと思います。