追悼 鈴木清順 清順美学・その胎動期から開花まで「らぶれたあ」「恐怖劇場アンバランス 木乃伊の恋」「日曜恐怖シリーズ 穴の牙」

最近観た映画の話。新文芸坐で「らぶれたあ」「恐怖劇場アンバランス  木乃伊の恋」「日曜恐怖シリーズ  穴の牙」を観ました。今年2月に亡くなった鈴木清順監督の追悼上映です。

 

 

らぶれたあ」(1959年/日活/監督:鈴木清順/脚本:石井喜一)
鈴木清順監督初期の作品で約40分の中編作品。後の「ツィゴイネルワイゼン」等の作品からは想像出来ないようなとっても甘〜いメロドラマ。笑

 

こずえ(筑波久子)は都会のクラブでピアノを弾きながら、恋人からのラブレターを心待ちにしています。こずえの恋人は山小屋に住む男、正男(待田京介)なのですが、手紙が滞るようになり・・・ついに別れを告げる手紙が届きます。

 

一方、こずえ(筑波久子)に想いを寄せる支配人兼歌手の福井(フランク永井)からは愛を打ち明けられます。

 

福井(フランク永井)はこずえに言います。
「君はラブレターに他愛なく酔わされている。もし君達の気持ちがラブレターのままだったら君は正男君の傍で暮らすんだな」

 

こうして、こずえ(筑波久子)は正男がいる山に向かいます。そして、そこにはあの日の正男(待田京介)が・・・と思ったのですが、正男の様子がどこかぎこちない…。
左利きの筈の正男が右手で猟銃を構えていたり・・・。

 

んー、この映画は観終わった後、隠れた名作だなぁと思いました。いや、または珍作ともいえるかも…?
と言いつつも、思わず甘〜い余韻に浸ってしまいました。まさかの結末に驚きますよ。さらにラストシーンの演出を観ると…やっぱり鈴木清順監督作品なんだなぁと思ったりもしました。

 

それにフランク永井さんが歌う主題歌がほんとにムード満点で良いんですよ。うっとりしちゃいますね〜。

 

機会があれば、ぜひ観て欲しいと思う作品です。

 

 

 

「恐怖劇場アンバランス 木乃伊の恋」(1973年/円谷プロダクション、フジテレビ/監督:鈴木清順/脚本:田中陽造)TV作品

 

「恐怖劇場アンバランス」はフジテレビ系列で1973年1月8日〜4月2日に放送されていた各話完結型のTVドラマ。全13話。しかし、制作されたのは1969年7月〜1970年3月で、約3年間お蔵入りしていました。


木乃伊の恋」(木乃伊はミイラと読むよ)はその第1話で鈴木清順監督の作品でした。
ちなみに脚本が田中陽造さん…あれ?鈴木清順田中陽造コンビって「ツィゴイネルワイゼン」(1980年)じゃないか⁉︎

 

以前、この作品はシネマヴェーラ渋谷でも上映され、その時も観ました。そして、今回再見して改めて、すごく面白く人間の執念を描いている傑作だと思いました。

 

江戸時代と現代がクロスオーバーしている話で、どちらも鈴木清順ワールドが溢れています。

 

江戸時代、ある日、即身仏になった僧が復活するのですが…エロ、エロ、エロ…性欲とSEXの執念で頭がいっぱい…
ついにエロ菩薩大量発生…

 

現代、この話を選んで口述筆記させる布川教授(浜村純)も自分の教え子(渡辺美佐子)へのSEXへの執念でいっぱい…

 

笑ってしまいつつも、「性」に対する執念は人間にとって切り離せないものなんだなぁと、思わず唸ってしまいます。

 

 

 

「日曜恐怖シリーズ 穴の牙」(1979年/大映関西テレビ/監督:鈴木清順/脚本:大和屋竺)TV作品

 

「日曜恐怖シリーズ」は1978年から1979年にかけて制作・放送された各話完結型のTVドラマ。

 

ある刑事(藤田まこと)が犯人(原田芳雄)を射殺します。弾丸は犯人の頭蓋をまわって入った穴から出ていきました。犯人はしばらく生きていましたが、やがて死にます。それ以降、刑事と犯人の情婦(稲川順子)は心霊現象に悩まされ・・・。

 

僕の大好きな原田芳雄さんがいきなり冒頭から登場し、テンションあがります。笑
でも、すぐに死んじゃう…。泣
ですが、死んでも登場。はぐれ刑事…じゃない藤田まことさんをどんどん追い詰め、転落させていきます。


怖〜い話なのに、鈴木清順ワールドが溢れる為なのか、独特の演出に何故かたびたび客席から笑いが起きました。

 

ちなみに、この作品の翌年に日本映画史に残る鈴木清順監督の代表作「ツィゴイネルワイゼン」が公開されます。
まさに鈴木清順爆発寸前‼︎という頃に作られたのが「穴の牙」なのです。超必見の隠れた傑作です。