新文芸坐で「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」「神様のくれた赤ん坊」を観ました。今年3月に亡くなった渡瀬恒彦さんの追悼上映です。5月20日(土)~30日(火)まで「追悼・渡瀬恒彦 銀幕に刻まれた不死身の役者魂」という特集が開催中です。
「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」(1984年/松竹/監督:山田洋次)
キャッチコピー「帰って来な 風子」北国は短い夏の夢なのか―。
寅さん(渥美清)は初夏の北海道で根無し草の風子(中原理恵)と出会い、一緒に旅をします。根室で叔母の世話で美容院に務める事になり落ち着いたかに見えた風子でしたが、旅回りのサーカス一座のオートバイ乗り・トニー(渡瀬恒彦)に惹かれ、ついて行ってしまいます。
柴又に帰って来た寅さんは風子が病床についているという話を聞きます。心配する寅さん(渥美清)はトニー(渡瀬恒彦)に談判しに行きます。このままでは風子がダメになると思った寅さんはトニーに風子と別れるように頼みます。
渡瀬さんが演じたトニーという役はオートバイサーカスの花形スター。でも、寅さんと同じ浮草稼業。ヤクザまがいで女たらし。キザで何やら危険な香りがするんだけど、そこがまた魅力的。やっぱり渡瀬さん、かっこいいんだな。
出会ってすぐに源公(佐藤蛾次郎)をパシり使うにトニー。さすがです。笑
寅さんに風子と別れるように言われるトニー。その時、トニーが寅さんに言うセリフが印象的。
「兄さん、案外純情ですね」
寅さんはどの作品を観ても面白いですね。本作もたくさん、笑いました。それでいて、寅さんの優しさには感動します。
個人的に本作の寅さんのおススメシーンは・・・クマに襲われる寅さんかな。笑
「神様のくれた赤ん坊」(1979年/松竹/前田陽一)
以前、新文芸坐で観た事があります。面白くて、大好きになった作品です。今回再見してさらにこの作品が好きになりました。渡瀬さんの代表作の1本です。
同棲中の森崎小夜子(桃井かおり)と三浦晋作(渡瀬恒彦)のところに見知らぬ女(樹木希林)が6歳くらいの子どもを連れて訪ねてきます。
女は隣に住んでいた明美という女が子どもを残して駆け落ちし、置手紙には子どもの父親かもしれない男の名前と住所が晋作をはじめ5人書いてあると話します。困惑する晋作ですが見知らぬ女は無理やり子どもを置いて去っていきます。
子どもの名前は新一(鈴木伊織)といい、名前は晋作の「しん」から取ったのだろうと小夜子はむくれます。
窮した晋作は新一を連れて、父親探しの旅に出ます。小夜子も何だかんだ言いながらも一緒について行きます。
尾道、そして九州に渡り別府、草津、唐津などをめぐる、若いカップルと母親に捨てられた子どもの珍道中を描いたコメディータッチで進むロードムービー。
旅先で出会う人々は曽我廻家明蝶、河原崎長一郎、森本レオ、吉幾三、吉行和子、嵐寛寿郎などいずれも個性的な人達。
それと序盤で子どもを押し付ける樹木希林さんの存在感が強烈で、観客はみんな笑ってましたね。
とにかく最初から最後まで笑いが絶えず、それでいて感動的なラストを迎えます。エンドロールで流れる高橋真梨子さんが歌う主題歌「もしかしたら」を聴きながら爽やかな余韻に浸れます。
最初は子どもを迷惑がっていた渡瀬恒彦&桃井かおりが演じるカップルでしたが、だんだん子どもに情が湧いてきます。その過程が何か良いなぁと思います。
「私たちの考えていることって、同じなんじゃないかしら」というセリフが印象に残ります。このセリフは女優志望の小夜子(桃井かおり)が初めてもらったセリフです。ようやくもらったセリフを喜ぶ小夜子はこの一言を一生懸命練習します。ところが、当日になって時間の関係で急にセリフがカットになってしまいます。
ですが、このセリフはこの映画の鍵になりラストに生きてきます。そこがまた、素晴らしい。
ちなみに公開当時の併映作品は「男はつらいよ 寅次郎春の夢」(1979年12月28日)でした。今回、渡瀬さんの追悼上映という事もあって別の寅さん作品ですが「男はつらいよ」シリーズと2本立て。何か思わずニヤニヤしてしまいますね。笑
「神様のくれた赤ん坊」予告篇