抗争と流血-東映実録路線の時代-「暴動島根刑務所」「日本暴力列島 殺しの軍団」

最近観た映画の話。シネマヴェーラ渋谷で「暴動島根刑務所」「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」を観ました。
上映前に「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」に出演していた女優・中島ゆたかさんのトークショーがありました。「日本暴力列島 殺しの軍団」や山下耕作監督、他の出演作品や共演してきた個性豊かな俳優達の事など貴重な話を聞く事が出来て良かったです。

 

「暴動島根刑務所」(1975年/東映/監督:中島貞夫
「脱獄広島殺人囚」に続く、松方弘樹さん主演の脱獄シリーズ第2弾。(ちなみにシリーズにストーリー的な繋がりはない)

 

昭和23年(1948年)、闇屋の沢本保(松方弘樹)は山口県徳山市でやくざの幹部(名和宏)と喧嘩の末、殺害。遺体を埋めますが、発見され逮捕されます。こうして沢本は懲役9年の刑を言い渡され、島根刑務所に収監される事になります。

 

そして、嫌味な囚人達のボス・吉成が登場・・・演じるのは金子信雄さんです。

 

金子信雄さん、登場しただけで観客の笑いを得る事が出来る・・・。
あゝ・・・金子信雄、恐るべし。

 

そんな金子信雄おじさま演じる吉成ですが、登場から数分後・・・なんと刑務所内の作業中、沢本(松方弘樹)に撲殺されます。沢本は懲罰房へ・・・。懲役3年加算。

 

一方、敵対していたやくざの親分を殺して服役していた川村(北大路欣也)は仮釈放が認められ出所します。ところが、川村を親分の仇と狙うチンピラ達(川谷拓三さんいます)が登場。そして、チンピラを殺して再び刑務所へ逆戻り・・・。

 

さて、沢本(松方弘樹)ですが絞首形場の掃除をしていると死ぬのが無性に怖くなってきました。そして、使役に出されている途中で警官の制服を奪い脱走。沢本は犬屋をしている江口(川地民夫)とその妹(賀川雪絵)のところに逃げ込みます。んで、犬の交尾を目撃・・・。

 

キャメラは交尾する犬の姿をアップで狙います・・・。一生懸命、腰を振るオス犬・・・。

 

犬の交尾を目撃した沢本(松方弘樹)は欲情し、江口の妹(賀川雪絵)をバックスタイルで犯し、何と一緒に逃亡・・・。

 

そして逃亡中、何故か唐突に溺れている子どもを助け警察に表彰されます。

 

ところが表彰された事がきっかけで正体がバレ、逮捕。再び刑務所へ・・・。

 

看守にいびられつつも、何だかんだと刑務所暮らしをしていく沢本。ところがある日・・・。

 

沢本が親しくなった囚人・皆川(田中邦衛)は豚の飼育だけが生きがいなのですが、ある日、看守に豚の飼育を禁止されてしまいます。絶望した皆川は突然、窓ガラスに突撃し投身自殺をしてしまいます・・・。

 

これは我々への当てつけだと佐藤慶さん演じる冷酷な看守長。というわけで所長(伊吹吾郎)は囚人全員に食事抜きの懲罰を与えます。沢本(松方弘樹)は「めーし寄こせ、めーし寄こせ」と恨み節。あゝ・・・食い物の恨みは怖い・・・。
やがて「めーし寄こせ、めーし寄こせー」の恨み節は刑務所全体に広がり、囚人達の大合唱になります。
そして、ついに・・・

 

暴動へと発展!!!

 

沢本の指揮のもと、看守を人質にして武器弾薬を奪い、刑務所を占領!!!囚人の待遇改善を要求します。

 

この時のまわりの囚人達の熱量がすごい。もう好き勝手カオス状態。これからどうなるのよ・・・って感じですが、穏健派(?)の川村(北大路欣也)の活躍で暴動は沈静化します。誰も今回の騒動で囚人を罰さないという取り決めだったのですが・・・。

 

沢本(松方弘樹)と川村(北大路欣也)は網走送りになります。えっ、網走ですか。東映映画で網走と聞いて思わずニヤニヤしてしまう、そこのあなた。この映画は「網走番外地」ではありませんよ。

 

「約束が違うじゃないか」と憤る沢本と川村でしたが、手錠で繋がれ網走行きの列車に乗せられます。

 

こうして、2人は網走へ・・・終マーク

 

とはならずに看守の隙をつき、手錠で繋がれたまま列車の窓から脱走!!!

 

んで、鉄橋の上。繋がれた手錠を次に来た列車の車輪に轢かせ、手錠を切る事に成功!!!


川村(北大路欣也)は鉄橋の上でガッツポーズ!鉄橋から落ちた沢村(松方弘樹)は華麗なクロールで河を泳ぎ、自由に向かって泳いでいくのでした。めでたし、めでたい。

 

って、あれ、脱獄成功で終わり!?この人達、殺人犯だよ!?これで良いの!?脱獄肯定!?

 

何故か爽やかな余韻を残し、この映画は終わるのでした。

 

というわけでこの映画はいかついタイトルですが、わりとコメディータッチでハッピーエンドな楽しい映画です。機会があればぜひご覧ください。

 

「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」(1975年/東映/監督:山下耕作
将軍と呼ばれた男・山下耕作監督作品。あまり覚えていなかったけど、以前観た記憶あり。たぶん観たのは新文芸坐山下耕作監督特集の時だったような気がします。

 

この映画は日活の大スターだった小林旭さんが東映に移籍後、第1回東映主演作になります。この映画の小林旭さんはつねに黒い革ジャンを着込んでいます。まさに「殺しの軍団」にぴったりという感じでかっこいい。

 

在日のやくざ・金光(梅宮辰夫)は庄司組の花木(小林旭)を襲いますが、返り討ちにあいます。重症を負った金光ですが、病院で花木から輸血を受け意識を取り戻します。「おんどれの血がもらえるか!豚の血のほうがマシじゃ!」と叫ぶ金光。それに対して「安心せえ。ワレとオレと同じ血や」と答える花木。そうです、2人とも在日なのです。この作品は在日問題が絡んでくるやくざ映画なのです。
花木と金光は意気投合し兄弟の契りを交わします。

 

その後、世話になっている庄司組のやり方が気に入らず、花木は庄司組から出て行きます。「食いもんが違いますからね。食い物が」と罵られる花木。

 

花木達は怒り、庄司組を襲撃。刑務所へ・・・。しかし、この件が話題になり「殺しの軍団」の異名をとる事になります。

 

出所後、花木は一家をかまえ広域暴力団・天誠会の大槻(遠藤太津朗)と盃を交わします。全国制覇を目論む天誠会。「殺しの軍団」は天誠会の尖兵として各地に出向き、暴れまわります。

 

でも、結局は・・・

 

天誠会に反抗した金光(梅宮辰夫)は天誠会の幹部・松原(成田三樹夫)や若衆に惨殺されてしまいます。その時の殺され方が印象的。殺されるシーン、河原にたくさん白い布が干してあります。そこに刺されて血を流す金光が歩いていきます。

 

実は僕は最初この映画を観た時、このシーンの意味がわかっていませんでした。白い布が赤く染まっていくのが印象に残る・・・くらいの気持ちでした。いや、今でもわかっているかと言われたら自信はないのだけれど・・・この映画について調べている時に「白い布」の意味を知り衝撃を受けました・・・。

 

かつて韓国人は白衣民族と呼ばれていました。つまり、この「白い布」を赤に染め上げるという事で日本人に利用され無残に殺されていく金光の虚しさや無念さを表現しているのです。


こんなに奥の深いシーンだったとは・・・勉強不足でした。

 

金光(梅宮辰夫)の死を知り、「満鉄小唄」を歌う花木(小林旭)・・・。

 

花木は訪ねて来た天誠会の幹部・松原(成田三樹夫)を刺し殺します。結局は天誠会に都合の良いように使われ、都合が悪くなれば捨てられる事を知ったのです・・・。
映画はこれで終わりますが、花木と天誠会との闘いはこれから始まるのです。

 

ラストのナレーションが印象的。
「花木は天誠会から破門された。だが彼は元々全てから破門されていたのだった」

 

うーむ、なかなか考えさせられる映画ですね・・・。

 

 


さて、今回のトークショーのゲストは中島ゆたかさんでした。中島ゆたかさんは「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」で梅宮辰夫さんの相手役として出演しています。
このトークショーでは今回上映した作品以外の事も多く語られました。特に印象に残っているのが「従軍慰安婦」(1974年/東映/監督:鷹森立一/脚本:石井輝男)という現在、幻になっている映画に話が及んだことです。
んー、気になりますね・・・観てみたいですね・・・。
シネマヴェーラさま、ぜひ上映お願いします。