「みちくさ」の記録⑥

ある日、ふと学生時代に書いた卒業制作のプロット「みちくさ」を見つけました。

記録の意味も込めて、あえて手を加えずに載せていこうと思います。

(全8回予定)

 

タイトルが何故か「白墨物語」になりました。笑

そして、内容は何とサスペンス・・・⁉

 

 

 

「白墨物語」

・企画内容
 高校3年の9月上旬、吉田孝一(18歳)の担任の国語教師・中村健吾(51歳)が河原で死体で発見された。中村は大量のチョークを食べ、喉に詰まらせて死んでいた。
 孝一が学校に来ると中村の死で教室が騒がしかった。それでも中村の代わりの教師が来て、いつものように出席を取り授業が始まった。孝一は何故、中村はチョークを食べて死んでいたのだろうか気になったが、それよりも同級生の前田芳美(18歳)の事が気になった。普段真面目で授業を休む事がない芳美が今日は途中で早退をしたのだ。孝一は芳美に好意を持っていた。


 翌日、芳美は学校に来た。特別変わった様子はなく、孝一が昨日はどうしたのか聞くと「体調が悪かった」と答えた。そして、いつものように授業を受けた。
 警察は中村の死は自殺ではないかと言っているが、孝一は疑っている。遺書がないからだ。しかし、争った形跡はない。孝一は芳美が中村の死に何か関係していると思っている。中村は芳美と不倫関係にあるという噂があったからだ。孝一は中村が死んだ河原に行く事にした。
 河原に行くと、そこには芳美がいた。芳美は中村が死んでいた場所に花を供え、チョークを食べていた。孝一は話しかけるべきか迷った。孝一が話しかけられずに見ていると、芳美はチョークを食べながら「先生・・・先生」と言って泣き始めた。孝一は「いったいどうしたの?大丈夫?」と心配しながら芳美に話しかけた。芳美は「何でもない」と言って走り去った。孝一は何かあると思った。
 
 1週間経った。中村の死から学校中のチョークがなくなり始めた。中村の幽霊の仕業だと噂になった。孝一は中村の幽霊は信じなかったが、チョークがなくなるのは芳美の仕業ではないかと漠然と思っている。しかし、それを確かめようとはしなかった。真実を知るのが怖かったのだ。
 放課後、孝一は先生に呼び出された。進路希望調査を白紙で提出したからだ。孝一は先生に考え中だと言って誤魔化した。その後、教室に戻ると芳美が一人でチョークを食べている姿を目撃する。芳美は「誰にも言わないで」と孝一に懇願した。孝一は「誰にも言わないから、理由を教えて欲しい」と言った。しかし、芳美は俯いて黙ってしまう。孝一は「チョークくらい僕だって食べられる」と言ってチョークを食べた。孝一の行動に心を打たれた芳美は理由を話し始めた。

 

 夏休み前のある日の放課後、芳美は忘れ物を取りに教室に戻った。すると中村がチョークを食べているのを目撃する。中村はチョークを食べてしまった事は誰にも言わないで欲しいと言い、芳美の足にしがみつき泣いた。芳美はどうしてチョークを食べていたのか尋ねる。中村の話では自分の息子に受験勉強を強いていたら、通っている高校で息子はストレスからチョークを食べしまい喉を詰まらせて死んでしまったという。芳美は誰にも言わないと約束して教室から逃げるように出て行った。                   
 翌日、中村は何事もなかったかのように授業をしている。放課後、芳美は中村の事が気になり、教室に行ってみた。すると今日も中村はチョークを食べている。中村は「何でも言う事を聞くからこの事は言わないでくれ」と懇願した。芳美は「先生も悩んでいるんだね」と言ってチョークを食べようとした。すると中村はすぐに「食べちゃいけない」と止めた。芳美は「先生だって食べちゃいけないよ」と言った。中村は生徒達に受験勉強を強いる事に疑問を持ち始め悩んでいる事を話した。二人はお互いの思っている事を話し合った。その日から、芳美と中村は教師と生徒の関係を超えてしまった。                  

 孝一は中村の死について聞いた。しかし、芳美はその事については知らないと言って教室から出て行ってしまった。孝一は中村の死について芳美が何か知っていると感じ、真相を知りたいと思った。とりあえず、中村家に行って中村の妻に話を聞いてみようと思った。
 孝一が中村家に行くと、中村の妻・中村千絵(50歳)がいた。孝一は家に上がり、中村が死ぬ前の様子を聞いた。それによると女子生徒が一人尋ねて来たという。孝一はおそらくそれは芳美ではないかと思った。
 そして、孝一が来る前にもその女子生徒が尋ねて来たと話した。その生徒の名前を聞くと芳美であった。芳美は中村とその息子の仏壇を拝んで涙を流したという。千絵が芳美を慰めると「奥さん、ごめんなさい。私、実は先生と・・・」と言って泣きついた。千絵は息子が死んでから夫との間は冷え切っていたと言い、別に怒っていないと話した。芳美はそれでも「ごめんなさい」と謝り続けた。
 芳美が中村家を出て行った後、千絵は仏壇に置いてあったチョークを見つめ食べ始めた。

 

 孝一はその後、中村が死んだ河原に行った。するとそこに人が倒れていた。それは芳美であった。芳美は大量のチョークを喉に詰まらせていた。孝一はすぐに芳美の背中を叩いた。芳美はチョークを吐き出し、一命を取りとめた。意識を取り戻すと芳美は「どうして助けたの!?」と言って孝一を責めた。孝一は思わず芳美の事が好きだと告白した。芳美は孝一の気持ちを受け入れられないと言ったが、それでも孝一は「きみの事が好きだ」と言って強引に芳美の唇を奪った。そして、孝一は「こんな事をしても中村先生は喜ばない。先生の為にも生きて欲しい」と言った。芳美は孝一の必死の説得によって心を開き始め、中村の死について話始めた。

 

 芳美の家庭は皆、頭が良く兄は一流大学に通っている。いつも頭の良い兄のようになるように親から言われていた。芳美は家でも学校でも勉強する事を強いられ少し疲れていた。そんな芳美にとって受験勉強に疑問を持ち始めた教師・中村には惹かれるものがあった。実は芳美には夢があった。芳美は高校時代、演劇部に所属しており将来は女優になりたいと思っていた。芳美は親に本当の気持ちを言い出せず、どうしたら良いか中村に相談に行った。中村は千絵に芳美との仲を怪しいと疑われているので家では話さず、河原に行った。相談しているうちに河原で二人は激しく求め合っていた。
 情事の最中、芳美は中村に「まだチョークを食べているの?」と聞いた。中村は「我慢しているが時々、食べてしまう」と答えた。芳美は「実はあれから私もイライラしている時にチョークを食べるようになった」と話した。中村は鞄から箱を取り出した。中村は「バレたくないから学校のチョークを食べるのはやめて、自分で買うことにしている」と言った。箱の中には大量のチョークが入っていた。芳美は「私も先生の息子さんのようにチョークを喉に詰まらせて死のうかな。それに先生とこの世で結ばれないなら一緒に死にたい」と言った。中村は息子と同じように死にたいと思っていたので先に大量のチョークを口に入れ、喉に詰まらせて死んだ。芳美も口に大量のチョークを入れたが、苦しさに耐え切れず途中で吐き出してしまった。芳美は中村の死体を見ると怖くなり、結局死ねずにその場から逃げだした。

 

 孝一は「この事は誰にも言わないほうが良いよ」と言って芳美を抱きしめた。

 

 翌日、芳美は日直だったので授業の後、黒板を消していた。ふっと見ると目の前にはチョークがある。芳美は無意識にチョークを食べてしまった。周りの生徒達はそれを見て騒ぎ出した。その光景を見ていた孝一は黙って立ち上がりチョークを食べ始めた。すると周りの生徒達も驚きながらも、一人また一人とチョークを食べ始め、教室中にチョークを食べる音が響き渡った。