「みちくさ」の記録⑤

ある日、ふと学生時代に書いた卒業制作のプロット「みちくさ」を見つけました。

記録の意味も込めて、あえて手を加えずに載せていこうと思います。

(全8回予定)

 

またタイトルが「みちくさ」になりました。

何故か登場人物の名前が前回までと変わります。笑

謎のダッチワイフ職人が登場・・・!?

シュールな展開で今読み返すと、これはこれで良いかも・・・と思ったりしました。笑

 

 

 

「みちくさ」

・企画内容
 高校3年9月上旬、吉田孝一(18歳)が学校に来るとクラスが騒がしかった。担任の国語教師・沢村義男(51歳)が突然失踪したというのだ。沢村は生徒に受験勉強を強いていて、あまり生徒からは評判は良くなかった。
 翌日、前田芳美(18歳)が、授業を無断欠席した。芳美は普段真面目な生徒で今まで無断欠席をした事はなかった。孝一は密かに芳美に好意を持っており、心配になった。先生が芳美の自宅に連絡すると今朝もいつも通り家を出たという。結局、その日芳美は授業には来なかった。
 放課後、孝一は河原を歩いていた。孝一は芳美がよく河原でスケッチをしているのを知っている。もしかしたら、芳美がいるかもしれないと思い孝一は河原に来たのだ。孝一が思っていた通り、芳美は河原でスケッチをしていた。孝一は芳美に話しかけ、描いている絵を見た。するとそこにはチョークを食べる人間が描かれていた。
 孝一はいったいこれは何なのか聞いた。芳美は一昨日の沢村との出来事を話し始めた。
 
 その日の放課後、芳美は忘れ物をとりに教室に戻った。するとそこで沢村がチョークを食べているのを目撃する。沢村は「この事は誰にも言わないでくれ」と言って芳美の足に縋りついて泣いた。芳美は誰にも言わないと約束し逃げるようにして教室を出て行った。翌日、沢村は失踪した。
 
 芳美は沢村の失踪に衝撃を受け、学校に行けなかったのだという。そして、何の為に勉強するのだろうと疑問を持つようになった。実は孝一も勉強する事に疑問を持っていた。孝一は芳美が好きだが、受験勉強の為にその気持ちを押し殺していた。芳美の受験勉強の邪魔をしてはいけないと思ったし、周りもこの時期に恋をする事を許さない雰囲気であった。孝一は親や先生の言う通りに一流大学に行く事に疑問を感じていた。芳美と孝一はお互いが思っている事を語り合った。孝一は本当はこの後、塾があるが芳美と一緒にいたい為そのまま夜になるまで話し続けた。
 芳美は「沢村先生のようにどこか遠いところに行きたい」と言い、「もう家に帰りたくないし、学校にも行きたくない」と言った。孝一は気持ちを抑えきれず愛を告白する。芳美は孝一の気持ちを受け入れた。そして、二人は家出を決意する。

 

 家出を決意したものの芳美と孝一には行くあてがない。とりあえず、河原を歩き始めたが疲れて果てて橋の下で休む事にした。深夜、二人が橋の下で激しく求め合っていると物音が聞こえた。どうやら近くに人がおり見られていると気づいた。芳美と孝一は逃げる人影を追いかけ捕まえる。それはこの河原の近くに住む山下五平(38歳)であった。山下はこの近所では有名な変質者で「ダッチワイフ職人」を自称している。山下の家には自作の大量のダッチワイフが置かれている。
 山下は「君達、夜中に何をやっているの?泊まるところないの?それなら僕の家に来ない?」と言った。芳美と孝一は気味悪がってすぐに逃げた。


 翌朝、公園のベンチでおにぎりを食べながら、芳美と孝一はお互いの財布の中を確かめ合った。芳美は3052円、孝一は2067円しか残っていない。この金では電車に乗って遠くに行けないと思い、孝一は一度家に帰って金をとってきてはどうかと芳美に提案した。しかし、芳美は嫌だと言った。途方に暮れているとふっと昨夜会った山下を思い出した。二人は山下に金を借りる事にした。


 芳美と孝一は山下の家に行った。呼び鈴を鳴らしても山下は出て来ない。しかし、ドアノブをいじると鍵が開いていた。芳美と孝一は家の中に入った。山下は留守のようである。          
 芳美と孝一は金がないか探した。しかし、見つからなかった。芳美と孝一が金を探していると、山下が帰って来て「いったい何を探しているの?」と話しかけてきた。孝一は焦って近くにあったダッチワイフで山下に殴りかかった。すると山下はダッチワイフを受け止め、孝一を殴り倒した。孝一は敗北を悟り、正直に金を探していたと話した。すると山下は怒る事なく、「君たち、やっぱりお金がないんだね。昨日会った時からそう思っていたよ」と言ってダッチワイフの陰部にいきなり手を入れた。するとその中から1万円札が何枚も出て来た。山下は「君たちにあげるよ」と言って芳美と孝一に10万円をくれた。山下は「ふふふ、僕はけっこう儲かっていて、お金持ちなんだよ」と言って笑った。芳美と孝一は呆気にとられながらも、お礼を言い山下の家から出て行った。

 

 芳美と孝一は電車に乗って遠くに行く事にした。芳美は「今年の夏はつまらない。もうすぐ夏が終わる。夏が終わる前に海で泳ぎたい」と言った。二人は海に行く事にした。しかし、駅に向かう途中で同級生に目撃されてしまい、改札で切符を買っている時に捕まってしまう。

 

 翌日、芳美が教室に入ると黒板に相合傘が大きく描かれ、芳美と孝一の名前が書かれていた。芳美は黙って俯いたまま椅子に座った。しばらくすると孝一が教室に入って来た。孝一は黒板を消して、「誰が書いたんだ」と怒った。しかし、誰も反応しなかった。孝一は怒って近くいた同級生にチョークを投げつけた。するとその同級生は怒り、孝一にチョークを投げ返し「お前も沢村の息子みたいにチョークを食って死ね」と言った。芳美はそれを聞いて驚いた。そして、芳美はそれはどういう事か聞いた。
 芳美と孝一が家出をしている間に失踪した沢村の話が広まっていた。それによると沢村は息子に受験勉強を強いていたら息子はストレスで通っている高校のチョークを食べてしまい、チョークを喉に詰まらせて死んだという。芳美と孝一は沢村がどうしてチョークを食べていたのか悟った。


 放課後、芳美は一人教室に残り、椅子に座っていた。ふっと沢村がチョークを食べている姿を思い出した。芳美は立ち上がり、チョークを食べた。
 翌日、芳美は日直だったので授業の後、黒板を消していた。ふっと見ると目の前にはチョークがある。芳美は無意識にチョークを食べてしまった。するとそれを見て周りの生徒達が騒ぎ出した。周りの生徒達は芳美を変人扱いした。すると孝一は「俺も食べる」と言ってチョークを食べ始めた。孝一は「お前らも食え」と叫んだ。しかし、誰も食べなかった。
 
 1週間経った。臨時の職員会議が開かれている。芳美と孝一がチョークを食べてから、他の生徒達も触発されチョークを食べ初め、学校中のチョークがなくなっていた。これ以上、チョークを食べる生徒が増えるのを防止する為、黒板をなくしてホワイトボードにしてはどうかと校長は提案した。教師達は皆、賛成した。
 黒板がなくなるという噂はすぐに学校に広まった。すると生徒達は「黒板を守れ!」というビラを作り、配り始めた。生徒達は団結して「ホワイトボート粉砕!黒板勝利!」と叫び、校長を人質にして校長室を占拠した。教師達は黒板を残す代わりに、チョークを食べないように要求した。生徒達は「チョークを食べない」と約束し校長室を明け渡した。こうして、ホワイトボード案は撤廃され、黒板は残される事になった。

 

 芳美と孝一は周りの生徒達の「チョーク闘争」をバカバカしく思い参加しなかった。そもそも黒板が残ってもチョークを食べられなかったら意味がない。生徒達は勝ったのではなく、教師達に問題をすり替えられ実は敗北したのだと思った。周りの生徒達がチョークを食べなくなっても芳美と孝一は河原で仲良くチョークを食べさせ合い、二人の世界に浸るのであった。