「みちくさ」の記録②

ある日、ふと学生時代に書いた卒業制作のプロット「みちくさ」を見つけました。

記録の意味も込めて、あえて手を加えずに載せていこうと思います。

(全8回予定)

 

ここから「チョーク」が登場し、タイトルが「道草」になりました。まだ「みちくさ」ではありませんでした。

 

 

 

「道草」

・企画内容
 高校3年9月の夜、制服姿の前田和夫(18歳)と石川妙子(18歳)は橋の上から川の流れを見つめていた。2人には行くあてがない。とりあえず2人でこの川に沿って歩いて行く事にした。2人は星空を見上げ、土手を歩き始めた。やがて2人は疲れて橋の下で休む事にした。今後の事について語り合い、もう学校にも家にも帰らないと誓った。先の見えない不安から2人は橋の下で激しく求め合い一夜を過ごした。
 朝が来た。しかし、新しい何かが見えて来た訳ではない。財布を見ると和夫は2050円、妙子は2380円しか入っていなかった。和夫は「こんな事になるなら、もっとお金を持ってくれば良かった」と言い、妙子は「突然だから仕方ないよ」と言った。
 
 和夫と妙子は進学校に通い受験勉強に励んでいた。しかし、ある日和夫と妙子の担任の国語教師・中村健吾(51歳)が失踪した。中村は妻を早く亡くし息子と二人暮らしだったが、息子は受験勉強に耐えきれず自殺した。その事が原因で中村は学校で生徒達に受験勉強を強いる事が苦痛になっていたのだ。
 ある日、忘れ物を取りに教室に戻った妙子は中村が誰もいない教室でストレスからチョークを食べてしまっているのを目撃する。中村はチョークを食べてしまった事は誰にも言わないで欲しいと言い、妙子の足にしがみつき泣いた。妙子は誰にも言わないと約束して教室から逃げるように出て行った。翌日、中村は突然失踪した。
 妙子は自分達に受験勉強を強いていた中村の失踪に衝撃を受け、何の為に勉強をしているのだろうと疑問を持つようになった。そんな時に和夫は数学の小テストを白紙で提出し、数学教師・田辺達雄(35歳)に呼び出され注意を受けた。次の日、和夫は学校を無断欠席した。和夫と妙子は特に仲が良い訳でも悪い訳でもなかった。妙子にとって和夫は同級生の一人に過ぎない。和夫が学校を休んだのも風邪程度に考えていた。
 帰り道、妙子は土手を歩いていた。すると河原で和夫が座り込んで川の流れを見つめている。和夫は制服を着ていた。妙子は今日はどうしたのかと話しかけた。和夫はもう学校に行くのが嫌になった、何の為に勉強するのかわからないと話した。和夫は学校に行くつもりで家を出たが途中で行くのをやめたのだ。2人は今の気持ちや将来の不安について話し合った。そして、そのまま家には帰らなかった。

 

 深夜になると和夫は家出の決意が揺らぎ始めていた。和夫は「やっぱり帰ろうか」と言い始めたが、妙子は「嫌だ」と言った。しかし、お互い金をとりに一度家に戻る事にした。金をとって来たら、またこの橋の下で合流する事にした。
 妙子は家の前まで来たが入るのに躊躇した。普段、両親は共働きで兄は大学に行って誰もいないはずだ。しかし、昨日妙子は家に帰らなかった。その事によって誰か家にいるかもしれないと思ったのだ。妙子はドアノブに手をかけた。すると鍵が開いている。妙子は家に入らず和夫との合流場所に戻った。
 妙子は橋の下に戻った。しかし、いつまで経っても和夫は来ない。夜になり妙子は疲れていつのまにか眠ってしまった。妙子は夢の中で中村がチョークを食べている姿を見た。妙子は悲しい表情でその光景を見ている。すると突然、妙子は夢から覚めた。
 目を開けるとそこには警察官がいた。妙子の捜索をしていたのだ。妙子は保護され家に連れ戻された。妙子は警察官に和夫はどうなったのか聞いた。和夫は金をとりに家に入ろうとしたが、なかなか入れずに夜になっても近所を徘徊していた。夜になりついに決心して家にこっそり入ろうとしたが失敗し捕まったという。そして、妙子の居場所も話したという。

 

 翌日、妙子は何事もなかったかのように学校に行き授業を受けた。放課後、妙子は一人教室に残り椅子に座っていた。ふっと中村がチョークを食べている姿を思い出した。妙子は立ち上がり、チョークを食べ始めた。