「みちくさ」の記録①

ある日、ふと学生時代に書いた卒業制作のプロット「みちくさ」を見つけました。

記録の意味も込めて、あえて手を加えずに載せていこうと思います。

(全8回予定)

 

大学卒業後、3年間知的障がい者介護施設で働いていました。その後、2年制の専門学校である東放学園映画制作科に入学、その時、僕は25歳になっていました。

 

2年生になると卒業制作があります。卒業制作で監督をしたい学生はプロットを提出し、他の学生の前でその作品について話さなければなりません。それは4月から6月初めくらいまで行われ、学生たちの多数決によって卒業制作でつくる作品を3作品選びます。僕も毎週、プロットを提出していたのですが、結果的に支持を得られず落ちました。

 

こうして今改めて自分が書いたものをみると、いろいろ思うところもありますが、その時は自分なりに一生懸命書いていたのを思い出しました。せっかくなので、この機会に26歳の頃の僕が書いた卒業制作のプロットを順番に見つめ直してみたいと思います。

 

ちなみに「みちくさ」は卒業後、シナリオを書きました。一度は最後まで書いたのですが、まだ完成せずに放置状態です。いつかまた書き始める時のヒントの為にも過去のプロットを見つめたいと思うのです。

 

最終的にタイトルは「みちくさ」となりましたが、当初は別のタイトルでした。

というより、その間に何度もタイトルが変わりますが・・・。

 

「みちくさ」は「チョーク」が重要な小道具として登場するのですが、卒業制作で書いた最初のプロット「大人の階段」では出てきません。それゆえ、何だか別作品という気もするのですが、これがなかったら「みちくさ」はありませんでした。ということで、今回載せる事にしました。

 

 

 

 

「大人の階段」

・企画内容
 高校3年9月、中岡哲夫(18歳)は受験勉強に励んでいた。通っている高校は進学校で哲夫は一流大学を目指している。ある日、哲夫は駅前でギターの弾き語りをしている矢部義男(20歳)と再会する。矢部は哲夫の高校の先輩で同じ吹奏楽部だった。矢部は大学に進学したが、つまらなくてやめてしまったという。矢部は何か目的があって大学に行くのなら良いが、目的もないのに行くとつまらない学生生活を送る事になると話した。
 矢部は哲夫に煙草を1箱渡し「吸ってみろ」と言い、「真面目に生きるのも良いが、たまには校則を破ってみるのも良い。今まで見えて来なかった世界が見えて来る」と言った。哲夫は戸惑いながらも受け取り、自宅に帰り煙草を吸った。しかし、上手く吸えずむせてしまう。

 

 次の日、哲夫が学校に行くと同級生達が騒いでいた。去年の生徒会長だった先輩が大学で心中事件を起こしたという。哲夫はこのまま一生懸命勉強して大学に行って何になるのだろうと暗い気持ちになった。哲夫は授業をサボり屋上で煙草を吸いに行った。
 しかし、哲夫を捜しに来た先生に煙草を吸っているところを見つかってしまい注意を受ける。先生に「お前のような怠け者はロクな人間にならない」と言われ、怒った哲夫はあてつけに他の生徒が授業中に校庭で教科書を焼き始める。哲夫は「俺は目的もないのに大学に行くのは嫌なんだ!お前ら、そんなに大学に行きたいのかよ!何の為だよ!お前らも教科書なんか焼いちまえよ!」と叫んだ。生徒達は唖然としてその光景を見ていたが、同じクラスメイトの羽田町子(18歳)だけは窓から教科書を投げ捨てて「私の教科書も焼いて!」と叫んだ。

 

 町子は注意を受けただけで済んだが哲夫は1週間の停学になった。町子は停学中の哲夫の様子が気になり、哲夫の自宅に行ってみる。しかし、哲夫はいなかった。仕方なく町子は帰ったが、偶然河原でギターを弾いている哲夫に出会う。町子は哲夫に「私にはあなたの気持ちがわかる。私も何の為に勉強しているのかわからない」と言った。哲夫は煙草を吸いながら町子の話を聞いている。町子は哲夫に「私にも吸わせて欲しい」と言った。哲夫は町子に煙草を1本渡した。町子はむせながらも煙草を吸う。哲夫は初めて一緒に煙草を吸ってくれる友人が出来て嬉しくなった。

 

 哲夫は停学が解け、学校に行った。しかし、町子がいない。町子は哲夫が停学中に「教科書なんか焼こう」というビラを配り問題になり1週間の停学になっていたのだ。哲夫はビラを配っただけで停学は厳しいと先生達に抗議する。しかし、先生に「やる気のある人の邪魔をするな。やる気のない奴はやめろ」と言われてしまう。哲夫は怒り先生に殴りかかる。

 

 哲夫は退学になった。すでに停学になった時から家には居ずらくなっていたが、退学になった事によってさらに居場所をなくしてしまった。そしてついにある夜、哲夫は家出をする。しかし、行くあてもなく夜の街をさまよう。やがて、どこか遠い街に行こうと思い駅に行く。すると改札口で立ち尽くしている町子に出会う。町子も家に居ずらくなり家出をしていたのだ。町子は「私もこのまま学校を退学しようと思う」と話した。しかし、2人には行くあてはない。とりあえず、どこかに行こうと思い切符を買おうとするが先生に見つかってしまう。
 結局、哲夫と町子は電車に乗る事が出来ず駅から逃げる。
 
 哲夫と町子は橋の上から川の流れを見つめ煙草を吸った。そして、とりあえず2人でこの川に沿って歩いて行く事にした。2人は星空を見上げ、土手を歩き始めた。