詩③

10代の頃に書いた詩をいくつか発掘。

 

「翼」  

少年はふっと窓の外を見た  

そこには少女がいた  

その少女を見た瞬間から 

この窓を壊そうと思った  

そしてついに少年は窓を壊した  

鳴り響く硝子の音とかけら  

少年はついに窓から飛び降りた    

しかし、驚いた少女は翼を広げ飛んでしまった  

これには少年も驚き自分も翼を広げようとした  

しかし、その時少年は気がついた  

そう少年は翼を持っていなかったのだ     

翼がなくても鳥は鳥   

なければないで空への憧れが強くなる  

少年は人間 

少女も人間  

でも少女には翼がある  

何故自分にはないのかと少年は悔やんだ     

ある時女神が少年に告げた  

実は少年にも翼があるのだと  

今はそれに気がついていないだけだと  

少年は信じられなかったが女神の言うことは信じられた     

そして少年は空を飛んだ

 

 

 

 

 

「本当の自分」

今の僕は本当の僕ではない気がする

世間とか常識とか 

みんなの中で作られている気がする

みんなに嫌われないように 

好かれるように 自分の気持ちや

やりたいことを殺している

そうだ!

今の僕は本当の僕ではない!

本当の僕になる為に新しく生まれ変ろう!

でも本当の僕って何なんだろう? 

 

 

 

 

 

「矛盾人間」

私は私なりにまっすぐに生きて来たつもりでした

しかし私の生きて来た道をふりかえると

その道は曲がりくねっていたのです

自分でもいつこのような道を歩き始めたのか

わからないまま歩いていたのです

正直に生きようとして嘘をつきました

人を傷つけないようにと人を傷つけました

真面目に生きようとして堕落しました

楽なことばかりしていてはいけない

苦労しなくてはと思い楽な事をしました

私は矛盾人間です

今までの人生をふりかえると矛盾だらけの道なのです

 

 

 

 

 

「夜明けの猫」

午前五時を過ぎた頃に窓の外で声がした

赤ん坊の声だと思ったら猫の声だ

にゃーにゃーにゃーとうるさく叫んでいる

どうやら猫同士のケンカが始まったようだ

にゃーにゃー

あー!うるさいよ!

寝かせてくれよ!

にゃーにゃー にゃーにゃー・・・

それにしても猫の声もにゃー以外に聞こえる時がある

何て言えば良いのだろう

それはそうとケンカならせめて明るい時にして欲しいものだ

もうすぐ夜が明けるだろうに・・・

そんなことを考えていたら

猫の声はだんだん小さくなり

そして しだいに消えた

鳥の声が聞こえる

もう夜が明ける 

 

 

 

 

 

「冬の朝」

冬の朝 

外の寒さは僕の部屋まで寒くしたようだ

冷たい空気の部屋の中で 

ふとんの中だけは人のぬくもりで暖かくなっている

目覚し時計が起きろとわめいている

僕はこんな朝 

ふとんの中から出るように

わざと目覚まし時計を離れたところに置いている

だけど目覚し時計を止めたら

またふとんの中に入ってしまった

この暖かさは人のぬくもりだから

いつまでもこの中に包まれていたいと思ってしまう

あと少し・・・あと少し・・・

この少しの幸せがたまらない

 

 

 

 

 

「ある木枯しの街の風景」 

窓の外に一人木枯しの街の中を歩く人がいる

それは男か女か 

風に紛れてわからない

その人は寒そうに背中を丸めて震えている

ふっとその人は裸木の前に立ち止まった

その人は見つけたのだ

すべての葉が散ってしまったかのように見えるその裸木に

枯葉が一枚だけ残っているのを

だがその時 

風に吹かれて最後の枯葉が散った

その時その人の表情は見えなかったが

とにかく寒そうに背中を丸めて震えている

そして その人はまた 

一人木枯しの街の中を歩き始めた 

 

 

 

 

 

「春待人」

子どもの頃は秋と冬が大好きだった

様々に色づく葉は美しく

僕の心をときめかせた

落葉を集めて焼き芋をした

その味はまさに秋の味だった

雪が降ると窓の外は銀色の世界になり

その世界で遊んだ

雪だるま 

雪合戦 

かまくら 

つらら・・・

すべてが僕に語りかけていた

あんなに大好きだった秋と冬が今の僕には辛い

心の中まで寒くなっていくようで僕は背中を丸める

落葉を見るたび心が枯れるようで 

裸樹を見るたびに淋しくなる

雪が降れば 

あの頃と同じように銀色に染まるけれど

僕はもうその世界で遊ばなくなった

だから この世界で

あの頃のように語りかけてこないのだろうか

僕は一人で背中を丸め寒さに耐えながら

暖かくなる春を待っているんだ 
 

 

 

 

 

「未来」

もしかしたら 

いつかまた来るかもしれない

ここは初めての街

ここには僕を夢中にさせたあの人もいない

いくつもの季節を一緒に駆け抜けた友もいない

すぐ泣く奴

自分の殻に閉じこもる奴

恋の相談をした奴

一人の女を争い合った奴

自分のことしか考えない奴

他人のことしか考えられない奴

自分に酔っている奴

我が道を走り続ける奴

みんな ここにはいない

だけど ここに来たら 

みんな ここにいるかもしれない

あの場所にいるみんなとは違う

新しいみんながいるかもしれない

それはまだわからないけれど・・・

 

 

 

 

 

「君色の不思議な傘」

曇り空の街を歩くと雨がぽつりぽつり

人が涙を流すように空も涙を流すのです

それが雨

空だって悲しくなったり嬉しくなったりするのです

今日の雨は何色の雨ですか

そう僕はあなたに問いかける

あなたは何も答えない

やがて街の人々は傘を広げる

僕も黒い傘を広げる

ももしかしたら今頃 

傘を広げた頃かもしれない

君の傘は何色ですか

赤い傘 

青い傘 

ピンクの傘

僕と同じ黒い傘ですか

それとも君色に染まった不思議な傘ですか

きっとその傘はどんな絵具で塗っても染まらないのでしょう

そんなことを考えながら

僕は雨の街を黒い傘と一緒に歩きます

まだこの傘は僕色に染まらないのです

でも この傘を僕色の傘に染めるより 

君色の不思議な傘に染めたい

僕も君色の不思議な傘が欲しいのです