司葉子 美しさと凛々しさと「33号車応答なし」「不滅の熱球」

新文芸坐で「33号車応答なし」「不滅の熱球」を観ました。

司葉子 美しさと凛々しさと」という女優・司葉子さんの特集を6月11日(日)~24日(土)まで開催中。

 

 

「33号車応答なし」(1955年/東宝/監督:谷口千吉

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以前、新文芸坐シネマヴェーラ渋谷で観た事あり。何度観ても良いサスペンス・アクションの傑作。

 

パトカー部隊・警視庁警官のクリスマス・イブの夜から朝にかけての物語。

パトカー33号車に乗り込むのは新婚の警官・村上巡査(池部良)とベテランの原田巡査(志村喬)。

前半、パトカー隊の日常(?)が描かれています。

いたずらの110通報・・・スピード違反・・・一家心中に遭遇・・・キャバレーのボッタクリ騒ぎに巻き込まれたり・・・出産間近の妊婦とその夫を病院に送り届けたり・・・と忙しいクリスマス・イブ。

様々なエピソードの合間に実はその後の展開の伏線が巧妙に散りばめられていたりします。

 

一旦、休憩の為に帰庁した休憩室で代々木の殺人現場の報告が流れます。アンテナ付きの自動車の玩具が落ちていると聞いて、村上巡査(池部良)と原田巡査(志村喬)はまさかと思い現場に向かいます。先刻、スピード違反で注意したタクシーの運転手がその玩具を持っていたからです。自分の子どものお土産の為に・・・。

殺害現場に行くと、2人が思っていた通り被害者は先刻の運転手でした・・・。ここから2人はある事件に巻き込まれていきます・・・。

 

池部良志村喬コンビ、絶妙なコンビネーションですね。さすがです。2人が巡回中に出会う人達も皆さん良い味を出しています。

個人的に印象深いのはパトカーでお産する妻を病院まで送ってもらった夫を演じた土屋嘉男さんですね。口笛のエピソードが暖かい。

 

後半に登場する犯人の造形も印象深い。

平田昭彦さん演じる浅沼は外見はインテリ風で優男。過去には半年くらいだったか警察官をしていた経歴を持つ悪人。

根岸明美さん演じるユリという女の子は明るいよく笑う、一見汚れを知らないような女の子に見えます。しかし、実は浅沼よりも冷酷な性格・・・かもしれない。

この犯人2人の造形の面白さが、この映画の後半を緊張感溢れるものにしていると思います。

 

さて、司葉子さんですが、この映画では池部良さん演じる村上巡査の妻・敦子を演じています。

村上巡査(池部良)と敦子(司葉子)は新婚ほやほや。ですが敦子はクリスマス・イブなのに夜勤の夫に不満を持っています。夫が夜勤に行った後、敦子とは対照的な姉・和子(中北千枝子)がやって来て、敦子をパーティーに誘います。初めは尻込む敦子でしたが、結局姉と一緒に出掛ける事にします。

村上巡査(池部良)&原田巡査(志村喬)の話がメインなのですが、敦子(司葉子)&和子(中北千枝子)の話も並行して描かれます。それで敦子は結果、夫の仕事に理解を示します。

新妻ぷりがキュートな司葉子さんに注目です。

 

それと・・・子役で石橋蓮司さんがちょっと出演しています。観る機会があったら、ぜひ探してみてくださいね。

 

 

「不滅の熱球」(1955年/東宝/監督:鈴木英夫

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戦火に散った伝説の巨人軍投手・沢村栄治の短い生涯を映画化。

沢村栄治池部良さんが演じ、沢村栄治の妻になる優子という女性を司葉子さんが演じました。

 

わし、野球あまり詳しくない・・・。

でも、この映画は野球あまり知らなくても大丈夫。

野球映画というより、悲しい青春映画という感じかな・・・。

熱い野球映画を期待すると不満が残るかもしれません。

ですが、愛妻物語としては感動作です。

 

ちなみにわしは「沢村栄治」の名を中学生の頃、テレビ埼玉で観た「巨人の星」の再放送で知りました・・・。

 

 

巨人軍のエース・沢村栄治池部良)はタイガース戦で試合を見に来ていた米井優子(司葉子)と親しくなります。映画の前半、沢村の野球での活躍と優子との初々しい恋が描かれています。

しかし、そんな日々は長くは続きません。やがて日中戦争が始まり、沢村は招集されます。そして、右手を負傷します。

 

兵役を終え、巨人軍に復帰しますがなかなか元の調子には戻りません。落ち込む沢村(池部良)を優子(司葉子)は励まします。そして、ついに沢村と優子は結婚します。

努力の末、沢村は再び以前の調子を取り戻し、優子は子どもを身籠ります。

しかし、再び沢村のもとに赤紙が届き・・・。

 

この映画の沢村栄治池部良)はよく悩みます。華々しい栄光よりも悩むシーンが多い。

前半は優子(司葉子)との仲を悩みます。優子の父親は沢村と優子が交際するのを快く思っておらず、結婚に反対しています。

中盤、戦地で負傷し、ボールが思うように投げられるか悩みます。

兵役を終え、巨人軍に復帰出来ましたが、思うように投げられず悩みます。後輩からも馬鹿にされます。

やっと以前のような調子を取り戻した沢村ですが、再び赤紙が届きます。妻に何と言えばいいかわからず悩む沢村・・・。特に妻に赤紙が届いた事を言い出せない沢村の姿は痛々しく胸が苦しくなります。

そんな沢村を支える優子の姿が健気で、思わず頑張れと応援したくなります。

 

この映画は実在の巨人軍の投手・沢村栄治を題材にした伝記映画という事で読売ジャイアンツに支援してもらっているのですが、実はかなり史実と異なるようです。

 

この映画で沢村栄治は2回招集されていますが、実際は3回。しかも、2度目の後は調子がもとに戻らず・・・3度目の招集前に巨人軍を解雇されています。

それと史実では乗っていた船が沈められて戦死・・・という事ですが映画では・・・。

 

っと他にもわかる人が見たら嘘だらけだと思ってしまう箇所があると思います。

僕は野球も沢村投手もあまり詳しくないので、そんなにわからないのですが、映画を面白く見せる為にかなり脚色しています。

あくまでこれは映画であり、実在の伝説の投手をモデルにしたフィクションと割り切れば、良い映画だと思いますが・・・。

 

しかし、ふっと思ったのです。本作は戦争が終わって約10年後に製作・公開された映画です。当時は実在の沢村投手を知る人が生きていたし、本作に協力した人もいたはず。

スタッフも俳優も、実はこの映画の「沢村栄治」は史実とかなり異なる部分がある事を知っていたのではないかと・・・。

そうか・・・もしかしてこの映画は夭折した投手・沢村栄治に対しての当時の人々の想いが反映されているのかも・・・。あくまでも個人的な意見ですが・・・。

ん~、どうなんだろう。