おもしろきことも無き世に面白く「高杉晋作」山岡荘八

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高杉晋作」(著・山岡荘八/全3巻)を読みました。幕末、長州藩の志士で破天荒に生きた男。まさに風雲児と呼ぶにふさわしい人物。

酒を飲んでは暴れ、芸者をあげて大騒ぎ。さらにその金の支払いを藩に押し付ける…。
でも高杉晋作という男、憎まれたりせず周りの人を惹きつける不思議な魅力を持っています。
長州藩の特徴は高杉晋作のような人物を育て活用する懐の深さにあると思います。長州藩の重役・周布政之助など苦い顔をしながら飲み代の尻拭いをして、晋作や若い志士達の活動を後押しします。

 

高杉晋作に多大な影響を与えた人物は、やはり吉田松陰。松蔭は暴れ牛のような晋作をあえて型にはめようとせず、志士として教育しました。
吉田松陰は優秀な人物ですが黒船に密航して外国に渡ろうとしたり、当時の藩にとっては危険な人物ではあります。そんな松蔭を育て引き立てる長州藩だからこそ、明治維新の原動力になったのだと思います。
 
高杉晋作の活躍については調べれば沢山出てくるし、この本に書かれているので割愛します。晋作はとにかく行動力があり、鋭い頭脳を持っています。短い生涯を駆け抜けるように生きた…そんな印象を受けます。
 
この小説で印象深いのは晋作の最期を愛人・おうのとの交わりを通して丹念に描いているところです。おうのは賢い女でも特別に器量が良いわけでもありません。おっとりとした素直な性格な女性として描かれています。そんなところが、晋作のようなぶっ飛んだ人物には癒しになったのでしょうか。
晋作の妻、雅子が病床の晋作を見舞った時におうのと鉢合わせますが、結局おうのを許してしまいます。それはやはり、おうのだから…なのでしょう。
 
激しく破天荒に生きた高杉晋作ですが、最期は畳の上で死にました。晋作は結核により、慶応3年(1867年)4月14日、29歳でこの世を去ります。日本が明治を迎える約1年前でした…。