とみいさん名作劇場⑧「子どものころ戦争があった」

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これはとみいさんの独断と偏見で個人的に好きな映画を紹介するコーナーです。

 

「子どものころ戦争があった」(1981年2月14日公開/松竹)

監督:斎藤貞郎
製作:脇田雅丈、伊藤公一、赤井明
原作:日本児童文学者協会編、日本子どもを守る会編
脚本:鈴木尚之
撮影:宇田川満
照明:野田正博
録音:伊藤和久
音楽:佐藤勝
美術:芳野尹孝
助監督:植村信吉
制作補:佐生哲雄
スチール:石田康男
編集:鶴田益一

 

出演:樫山文枝斉藤優一、キャサリン梶芽衣子三益愛子栗田ひろみ中原ひとみ伴淳三郎山谷初男、山本幸栄、林ゆたか、椎谷健治、吉田良

 

 

 

 昭和20年4月、日本の敗色が濃くなっていた頃。空襲で多くの都市が焼かれ、子ども達の集団疎開が始まっていました。夫を召集された蓮池一枝(樫山文枝)も一人息子の太郎(斉藤優一)を連れて、実家のある福島県磐城郡米川村に疎開します。
 実家は古くからの醸造家ですが、今は軍の命令で味噌を作っていました。一枝の母・野本みよ(三益愛子)が夫の死後、30年間この酒蔵を守り続けています。みよは太郎に「二番蔵にだけは近寄るな」と言いました。
 実家には一枝の他にも二枝(梶芽衣子)、政枝(中原ひとみ)という2人の娘も身を寄せていました。

 

 ある夜、二枝(梶芽衣子)は警察にアメリカ人の夫・アーノルドと娘の事を追及されます。憲兵の話ではアーノルドは対日放送で日本の降伏を訴えていると言います。二枝はアーノルドとの間に娘がいる事を否定します。
 しかし、実はみよ(三益愛子)が自分の反対を押し切ってアメリカ人と結婚した娘の二枝に怒り、孫のエミ(キャサリン)を蔵に閉じ込めていました。

 

 太郎(斉藤優一)は祖母・みよ(三益愛子)から近づいてはいけないと言われた二番蔵が気になっていました。
 ある晩、母親を探していた太郎は浴室を開けます。するとそこには二枝(梶芽衣子)と金髪の少女(キャサリン)がいました。
 「アメリカ人がいる!」と驚く太郎。母・一枝(樫山文枝)は「あなたのいとこ」と教えます。

 

 憲兵や警察は執拗に二枝(梶芽衣子)に娘・エミ(キャサリン)の存在を確かめに来ます。しかし、その度にみよ(三益愛子)が強気でつっぱねていました。
 エミのことが気になっていた太郎(斉藤優一)は二番蔵のそばの柿の木に登り、窓からエミに話しかけます。その日から、2人の対話が始まります・・・

 

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 第二次世界大戦中、アメリカン人の父を持つがゆえに周囲の人々から迫害され、土蔵に幽閉されている混血児・エミ(キャサリン)とその家族の物語。
 子役の演技が良い味を出している映画です。もちろん、ベテランの大人達の演技も胸を打ちます。
 太郎(斉藤優一)は戦時中の子どもなので、当然学校ではアメリカ憎し!の教育を受けています。ですから、エミと初めて出会った時、エミをアメリカ人なんて!と受け入れませんでした。
 しかし、太郎はエミの事が気になっていました。それに疎開っ子の太郎は周囲の子ども達に馴染めず孤独でした。太郎は土蔵のそばにある柿の木に登り、エミに話しかけるようになります。太郎とエミはだんだん仲良くなっていきました。
 エミは「わたしね、梅の花が散る頃に学校に行けるのよ」と言って、学校に行ける日を楽しみにしています。しかし、新学期になっても当然学校には行けず、土蔵に幽閉されたままです。そんなエミを太郎は連れ出して、一緒に遊びます。そして、エミの立場を太郎もだんだんわかってくるんですね。
 太郎ちゃんってほんと優しいんですね。そして、芽生える幼い恋心・・・。
 太郎ちゃんとエミの遊んでいるシーンは美しい。まだ心が汚れていない子ども達がキラキラしています。だからこそ、戦争の残酷さが観ている者の心を鋭く突き刺すのです。大人達が始めた戦争に何も知らない子ども達が巻き込まれてしまう悲劇が描かれています。

 

 エミ(キャサリン)の母親を演じたのは梶芽衣子さん。アメリカ人の夫を持ったがゆえに、憲兵に睨まれています。村人からは非難の目で見られています。しかし、負けないように力強く生きる姿が心に響きます。時代や軍国主義、閉鎖的なムラ社会や偏見と闘っていると思いました。

 

 また、祖母を演じたのは「母物映画女優」と呼ばれた三益愛子さん。貫禄があり、エミを土蔵に閉じ込めたりして厳しい態度をとる事もありますが、実はそうやって自分なりにエミや家を守ろうとしている・・・という感じがして印象に残りました。

 

 それと醸造家の爺や役はバンジュン(伴淳三郎)ですよ。味が合って、好きですね。
アジャパー

 

 あ、ちなみに70年代の美少女・栗田ひろみさんのたぶん・・・今のところ?引退前のラスト映画・・・だと思われます。

 

 この映画は現在ではあまり観る機会の少ない作品かもしれません。ですが、僕は隠れた名作だと思っています。もしも名画座などで観る機会があったら、おススメしたい作品です。