とみいさん名作劇場⑦「女囚さそり けもの部屋」

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これはとみいさんの独断と偏見で個人的に好きな映画を紹介するコーナーです。笑

 

「女囚さそり けもの部屋」(1973年7月29日公開/東映

監督:伊藤俊也
原作:篠原とおる
脚本:松田寛夫
企画:吉峰甲子夫
助監督:馬場昭格
撮影:清水政郎
照明:梅谷茂
録音:広上益弘
美術:桑名忠之
装飾:酒井喬二
装置:吉田喜義
記録:山内康代
編集:田中修
スチール:加藤光男
進行主任:東一盛
擬斗:日尾孝司
美粧:井上守
美容:花沢久子
衣装:福崎精吾
演技事務:和田徹
現像:東映化学
音楽:菊池俊輔
主題歌:「恨み節」作詞:伊藤俊也 /作曲:菊池俊輔 /歌:梶芽衣子

 

出演:梶芽衣子成田三樹夫、李礼仙、渡辺やよい南原宏治藤木孝真山知子、森みつる、神太郎、

 

 


 「さそり」という異名を持つ松島ナミ(梶芽衣子)は刑務所を脱獄します。逃走中、地下鉄でナミは2人の刑事に追われます。
 ナミは手錠をかけられますが、隠し持っていたドスで1人を殺し、手錠の片端が掛かっている権藤刑事(成田三樹夫)の右腕ごと切り落とし、逃走しました。
 その後、ナミはユキ(渡辺やよい)という若い女に助けられ親しくなり、仕事を見つけアパートで一人暮らしを始めます。ユキは家庭の事情から売春で生計を立てており、知的障がい者の兄・正男(神太郎)と二人暮らしをしていました。

 

 ナミ(梶芽衣子)は洋裁の針子として働き始めます。しかし、土地のヤクザ・鮫島興行の幹部・谷田(藤木孝)はナミの正体を知り、肉体関係を要求してきます。ナミは谷田の情婦・安江(真山知子)の嫉妬を巧みに利用し、谷田を殺害します。その事を知った鮫島(南原宏治)はナミを捕らえます。
 鮫島の女房・カツ(李礼仙)はかつてナミと同じ刑務所にいた事があり、ナミに苦しめられた事がありました。憎悪に燃えるカツはナミに凄絶なリンチを加え、鳥小屋に監禁します。

 

 監禁されたナミ(梶芽衣子)はそこで客に子どもを孕ませられた風俗嬢・しのぶ(森みつる)が無理やり堕胎手術をさせられ死んでしまう姿を目撃します。鮫島達のやり方に憎悪を燃やしたナミは脱獄し、しのぶの堕胎手術をした悪徳医師や鮫島の子分達を次々に殺害していきます。
 カツ(李礼仙)はナミの恐怖に怯え、自ら刑務所の中へ逃げ込みます。鮫島(南原宏治)はビルの中に隠れますが、ナミによって殺されます。
 一方、右腕を切り落とされた権藤刑事(成田三樹夫)は猟犬のようにナミの行方を追っていました。ナミはマンホールから下水道に逃げ込みますが、地上には警官の包囲網が敷かれ身動きが取れなくなります。

 

 ナミが下水道に逃げ込んでいると知ったユキ(渡辺やよい)は火のついたマッチをマンホールから落とし、ナミに呼びかけます。すると半身を泥水に浸かり、疲労と飢えと寒気に耐えていたナミはユキの呼びかけに気がつきました。それから一週間、ナミはユキからの差し入れで耐えていました。
 しかし、ユキは権藤(成田三樹夫)に捕まり拷問の末にナミの居所を吐いてしまいます。
 警察はマンホールからガソリンを流し込み、火をつけました。下水道に炎は瞬く間に広がり、権藤は高笑いを浮かべますが・・・・・・

 

 

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 梶芽衣子主演、さそりシリーズの3作目です。梶芽衣子さんの代表作のシリーズですね。
 近年では園子温監督が「愛のむきだし」で「さそり」をフィーチャー、オマージュを捧げていました。
 また、海外ではタランティーノ梶芽衣子さんの大ファン。日本だけではなく、海外にも影響を与えています。

 

 

「女囚701号 さそり」(1972年8月25日公開/東映/監督:伊藤俊也
「女囚さそり 第41雑居房」(1972年12月30日公開/東映/監督:伊藤俊也
「女囚さそり けもの部屋」(1973年7月29日公開/東映/監督:伊藤俊也
「女囚さそり 701号恨み節」(1973年12月29日/東映/監督:長谷部安春

 

 

 伊藤俊也監督のさそりシリーズは東映東京撮影所のヒット作でしたが、先鋭的な演出がエスカレートしていき、さらに伊藤俊也監督は梶芽衣子さんと衝突…一時期、干されました。(伊藤俊也監督の次作は1977年「犬神の悪霊」になります。この作品も問題作。笑)

 

 梶芽衣子主演のさそりシリーズはどの作品も好きなのですが、あえて1本選ぶとするならば問題作の「女囚さそり けもの部屋」が特に好きです。笑

 

 まず、冒頭のシーンからいきなり心を奪われてしまいました。脱獄したさそり(梶芽衣子)は地下鉄で権藤刑事(成田三樹夫)に追われています。さそりは権藤に手錠を掛けられ、権藤は自分の右手に手錠の片端を掛けました。しかし、何と驚くべき事にさそりは権藤の右腕ごとドスで切り落とし逃走!ナミはそのまま血みどろの権藤の右腕をぶら下げたまま全力で街の中を逃走して行くのです・・・!そして、オープニング・・・。

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 冒頭の凄惨で迫力あるシーンで唖然としていまいました。このシーンを観ただけでこの映画は面白い作品になるに違いないと思いました。
 その後、さそりは墓場に逃げ込みます。そして、墓石で手錠を削り落そうと・・・。

 

 やはり、梶芽衣子さんは目力が強い。他の作品でもそうですが、さそりは特に個性的で力強い目力が強調されていると思います。ぐわぁっと大きく目を開く梶芽衣子さんって、惹きつけられる何かがありますよね。

 

 さそりってシリーズを通して、極端に台詞の少ない主人公です。2作目「女囚さそり 第41雑居房」の台詞は何とたった二言!他のシリーズもあまり台詞ありません。
「女囚さそり けもの部屋」は何言だったかな・・・数えていませんが、他のシリーズよりは台詞がある気がします。いや、でも、そんなにないですよ。
 さそりって平気で人を殺しますし、殺し方も残忍ですが、まったく感情がないわけではありません。ユキ(渡辺やよい)のお腹の赤ちゃんを気遣ったり、優しいところもあります。さそりの笑顔が見らえるのは、本作だけ・・・かも!?
 鳥小屋に監禁された時、殺された風俗嬢・しのぶ(森みつる)を見て、女の恨みを背負い憎悪の炎を燃やします。
 その時、流すさそりの涙・・・!

 

 

 両親のいないユキ(渡辺やよい)は工場の事故で知的障がい者になってしまった兄・正男(神太郎)を養う為に、娼婦をしています。ですが、お金がなくてショバ代を払っていません。だから、墓場で・・・・・・。ちなみにユキは自分の股間をマッチの灯で照らして、客を引っかけるという奇抜(?)な方法で商売をしています。で、このマッチね、実は後半、下水道のシーンで重要な小道具として、再び登場するのですよ。だから、見逃さずにきちんと見て欲しいのです。マンホールから下水道に火のついたマッチを落としていくシーン、美しく印象に残ります。

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 カツ(李礼仙)の奇怪な衣装も注目して欲しい。そして、さそりに追い詰められ、どんどん狂って廃人になっていく姿・・・。

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 そして、やはり忘れてはならないのはミッキー(成田三樹夫)ですね!!!
 さそりに右腕をぶった斬られたミッキー・・・執念の捜査!
 本作の楽しみ方の1つに「さそりVSミッキー」というのもありますね。
 果たして勝つのは・・・!?

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 アバンギャルドなシリーズの中でも特に過激であり、いろいろ奥深い名作です。

 超必見!!!