幻のプロット「冬の祭」発見

以前、学生時代の卒業制作のプロット「みちくさ」を発見した時に、他のプロットも発見しました。

 

「冬の祭」という僕もすっかり忘れていたプロットがありました。1年生の時にあるドラマ制作という授業で書きました。ちょっと自分でもこれはイマイチかな・・・と思うのですが、いずれどこか使える部分もあるかもしれないとふと思い・・・

あえて手を加えずに記録として載せようと思います。

 

「冬の祭」は映像化されず、ボツになりました。笑

今、読むと展開がシュールだなぁと思います。

何だかツッコミどころ満載ですな。

 

 

 

ノートテイク

筆記通訳のことで、難聴者の耳の代わりをすること。

話し手の言葉やその場の情報を忠実に聞き取り、筆記していく同時通訳のようなもの。

学校では先生の授業内容を筆記により同時通訳したりする。

 

 

 

「冬の祭」

・企画内容
 高校3年の12月になっても吉田孝一(18歳)は進学か就職か、はっきりせずに進路に迷っていた。友人の多くは受験勉強に追われていた。しかし孝一は放課後、誰もいない教室でギターを弾いていた。すると先生が入って来て、もっと真面目に進路について考えるように説教される。孝一は曖昧に答えて教室を出て行った。

 

 帰宅すると妹の吉田香織(16歳)が友人の川村里美(16歳)を家に呼び一緒に宿題をしていた。香織は孝一に気がつくと里美を孝一に紹介した。里美は先週、転校して来たばかりで香織と同じクラスになった。里美は聴覚に障害があり、香織が里美のノートテイクをした事から仲良くなった。そして香織の勧誘で文芸部に入部したという。孝一は里美に一目惚れしてしまう。何か筆談で話そうと思ったが何を話して良いかわからず、すぐに自分の部屋に行ってしまった。孝一は里美の事が忘れられない。布団に入っても考えるのは里美の事ばかりだった。

 

 次の日の放課後、孝一は里美の事を考えながら誰もいない教室に残っていた。ぼんやりとギターを弾き始めるが、あまり弾く気になれず、すぐに弾くのをやめてしまう。するとそこに谷村恵子(18歳)が入って来る。(恵子は以前、孝一とバンドを組んでいた。孝一はギター、恵子はドラムを担当していた。しかし、今は受験勉強の為にバンドは解散している)

 

 恵子は進路について考える事から逃げていると孝一に説教を始める。しかし、孝一はうわの空。やがて孝一は恵子の説教を無視して里美の事を話始める。里美の為にラブソングを作っても聴いてもらえないと悲しんでいた。恵子は里美の事を諦めるように勧める。しかし、孝一があまりに思いつめているので「あんた、詩が書けるじゃない。詩でも贈れば?」と話した。そして、連歌はどうかと提案する。(連歌とは短歌の五七五を詠んだ後に別の人が七七と句を連ねて交互に詠む詩歌)

 

 さっそく孝一は帰りに短冊を買い「夕暮れに 揺れる心は 春を待つ」と詠んだ。孝一は香織にその短冊を里美に渡してくれと頼んだ。香織はそんな事をしないで直接話せば良いではないかと言った。香織は「放課後、文芸部の部室に来れば会えるよ」と言ったが孝一はとにかく短冊を渡して欲しいと強引に頼んだ。

 

 次の日、香織は里美に短冊を渡した。里美は孝一が何故このような句を詠んだのか意味がよくわからず困惑した。しかし、とりあえず下の句を「木枯らしの中 時は流れる」と詠み香織に渡した。

 

 香織は自宅に帰り、孝一に短冊を渡した。孝一は里美の書いた下の句を詠んで、あまり自分に気がなさそうだと思い残念がった。香織は「これじゃ伝わらないよ」と孝一に話した。孝一はもっと自分の想いが伝わるような句を考えようと思った。香織はそんな古風な事はやめて直接、筆談で話したらどうかと言った。孝一はそれもそうだと思い、明日は文芸部の部室に顔を出そうと決意する。

 

 翌日の放課後、孝一は文芸部の部室を訪ねた。するとそこに里美がいた。里美は友人達と筆談で会話していたが、孝一に気がつくと挨拶をした。そして短冊を取り出し「花の音 耳を澄ませど 聴こえない」と上の句を詠み孝一に渡した。孝一は下の句を「それでも花は 語り続ける」と詠んで返した。里美は微笑し、それから孝一と里美は連歌を通して仲良くなっていった。

 

 12月下旬、もうすぐ冬休みである。放課後、いつものように孝一は里美に会いに文芸部の部室に向かっていた。すると恵子に出会った。恵子は「孝一、クリスマス予定空いている?」と言った。孝一は今のところ予定は空いているが里美を誘うつもりだと言った。恵子は「ちょっと来て」と言って孝一を誰もいない教室に連れて行った。そして入るなり孝一に進路について説教を始めた。すると孝一はまだ漠然としているが福祉関係の専門学校に行こうと考えていると話した。恵子はそれを聞いて沈黙した。孝一は恵子の様子が変わり心配する。すると恵子はいきなり怒り始め「どうして私の気持ちに気がつかないの!?」と言って教室を出て行ってしまう。ようやく孝一は恵子の気持ちに気がついた。しかし、孝一にはどうして良いかわからない。
 その後、文芸部に顔を出したが恵子の事を考えてしまう。里美からクリスマスの予定を聞かれたが、つい予定があると言って断ってしまう。

 

 帰宅すると香織は孝一に「どうして里美から誘ってくれたのに断ったの?」と聞いた。孝一は恵子の事を話した。すると香織は「お兄ちゃんはどっちが好きなの!?」と孝一を問い詰めた。孝一は「里美ちゃんだよ」と答えるが「恵子は3年間一緒にバンドをやってきたし、それに里美ちゃんと連歌をする事を提案したのは恵子だ」と苦しい胸のうちを話した。香織は何も言う事が出来なかった。
 孝一はクリスマスも正月も里美と過ごさなかった。恵子とはその後、話す事もなく冬休みになってしまった。

 

 1月下旬、孝一は福祉関係の専門学校を受験し合格した。春からこの街を離れ一人暮らしをする事になった。恵子に告白された日から文芸部には顔を出しておらず、里美とは時々廊下で挨拶を交わす程度であった。孝一の心は里美と恵子の間で揺れていたが、出来るだけその事を考えないようにしていた。そんなある日の放課後、孝一は大学の決まった友人、岡村定信(18歳)と教室でギターを弾いていた。(岡村は以前、孝一と恵子とバンドを組んでいた)するとそこに恵子が入って来る。岡村は恵子に「お前も大学、決まったんだろ?卒業前にバンド再結成してライブやろうぜ」と話しかけた。恵子は渋っていたが岡村は「ここにはドラムもないし、軽音楽部の部室に行こう」と強引に恵子を誘い、3人は軽音楽部の部室に向かった。こうして孝一と恵子の仲は友達としてもとに戻っていった。

 

 自宅に帰ると香織が里美を連れて来ていた。孝一はどう接して良いかわからない。すると里美は孝一に短冊を渡した。そこには「桜咲く その頃あなた もういない」と書かれていた。孝一は下の句を「冬の祭は 旅立つ準備」と書いて短冊を返した。