「みちくさ」の記録④

ある日、ふと学生時代に書いた卒業制作のプロット「みちくさ」を見つけました。

記録の意味も込めて、あえて手を加えずに載せていこうと思います。

(全8回予定)

 

何故かタイトルが「一瞬の夏 叛乱」に変わりました。

内容はまさかのメロドラマ!?

 

 

 

「一瞬の夏 叛乱」

・企画内容
 高校3年7月下旬、石川妙子(18歳)は受験勉強に励んでいた。妙子の家庭は皆、頭が良く兄は一流大学に通っている。妙子は家でも学校でも勉強する事を強いられ疲れていた。そのうえ、恋人の前田和夫(18歳)に受験勉強に集中したいから別れたいと言われ憂鬱な気分である。

 

 ある放課後、妙子は忘れ物をとりに教室に戻ると担任の国語教師・中村健吾(51歳)がチョークを食べているのを目撃する。中村はチョークを食べてしまった事は誰にも言わないで欲しいと言い、妙子の足にしがみつき泣いた。妙子はどうしてチョークを食べていたのか尋ねる。中村の話では自分の息子に受験勉強を強いていたら、通っている高校で息子はストレスからチョークを食べしまい喉を詰まらせて死んでしまったという。中村は早く妻を亡くし、息子に過剰に期待していた。息子にはそれが耐えられなかったのだ。妙子は誰にも言わないと約束して教室から逃げるように出て行った。
 翌日、中村は何事もなかったかのように授業をしている。放課後、妙子は中村の事が気になり、教室に行ってみた。すると今日も中村はチョークを食べている。中村は「君の奴隷になるから、この事は言わないでくれ」と懇願した。この日から中村は妙子の奴隷になった。それから放課後は中村と二人で過ごすようになり、お互いにチョークを食べさせ合ったりして遊んだ。
 中村は当初はストレスからチョークを食べていたが、だんだんチョークを食べるのが快感になっていた。中村は白いチョークが特に好きになった。それはチョークを食べている時、チョークがポロポロ零れる様子が雪みたいで妙子が綺麗だと言ったからである。
 夏休みになっても妙子と中村の関係は続いた。学校に忍び込み、時々教室で会いチョークを食べさせ合った。ついにはマヨネーズや味噌をつけて食べるようになった。
 中村との関係が始まってから妙子の塾での成績が上がり、周りからは受験勉強に励んでいるように見えた。中村は妙子に勉強も教えた。妙子と中村は幸せだった。

 

 9月初旬、妙子と中村の関係はまだ続いている。しかし、ある放課後、二人がチョークを食べさせ合っているといきなり教室のドアが開き和夫にその光景を見られてしまう。和夫は偶然、忘れ物を取りに戻ったのだ。中村は和夫にこの事は誰にも言わないで欲しいと泣きながら懇願した。和夫は誰にも言わないと約束して逃げるように教室を出て行った。
 翌日、中村が教室に入ると黒板に大きな字で妙子と中村の事が書かれていた。中村はショックですぐに教室を飛び出し、そのまま失踪した。中村が失踪してから妙子は元気がなくなり受験勉強も疎かになった。
 ある放課後、妙子は土手で川の流れを見ていた。中村が失踪してから土手で川の流れを見つめるのが日課になっている。家に帰って勉強するように言われるのが嫌だったし塾にも行きたくなかった。何もかもが嫌になっており、どこか遠いところに行きたいと考えていた。その時、偶然和夫が土手を通りかかった。
 和夫は中村の失踪から妙子に元気がない事を気にしていた。自分が妙子と中村の事を話した事によって、まさかこんな事になるとは思っていなかった。和夫は妙子を励まそうと話しかける。そして、再び復縁を迫った。和夫は中村の事があってから、再び妙子に対する愛情を持ち始めていた。しかし、妙子の和夫に対する気持ちはすでに冷めていた。それに和夫の親や先生が敷いたレールに乗って生きる事に疑問を持たない生き方にも反発し始めていた。妙子と和夫はお互いの気持ちを話し合うが分かり合えない。結局、和夫は失意のまま帰って行った。


 和夫が帰ってからも妙子は土手で川の流れを見つめていた。いつの間にか夜になっていた。すると突然、男が話しかけてきた。それは何と失踪したはずの中村であった。妙子は驚き、これは夢かと思った。しかし、それは夢ではなく本物の中村であった。中村はこの街に帰り、再び学校に戻ろうと思ったが、やはり今更戻ることは出来ないと言って迷っていた。妙子と中村はとりあえず、土手を歩き始めた。しかし、二人には行くあてがない。
 歩き疲れて橋の下で休むことにした。中村は妙子が好きだと言った白いチョークを持ち歩き、妙子の事を想っていたと話した。その日は橋の下で一夜を明かした。
 朝が来ても二人には新しい何かは見えてこない。中村は妙子に「もう帰りなさい」と言った。妙子が「先生はどうするの?」と聞くと中村は「やっぱり先生はこのまま帰らずにどこか遠いところに行くよ」と言った。妙子は「私も帰りたくない。先生と一緒にどこか遠いところに行く」と言って中村に抱きついて泣いた。妙子は「こんな制服を着て縛られたくない。自由に好きなように生きたい」と言った。結局、二人は別れることが出来ずに駅に向かう事にした。しかし、駅に向かう途中で通学中の生徒に見つかってしまい通報されてしまう。そして、妙子と中村は駅に着くと捕まってしまった。

 

 翌日、妙子は何事もなかったかのように授業を受けた。中村は学校に来なかった。放課後、妙子は他の先生に中村はどうなるのか尋ねた。学校側から通告されたわけではないが、中村はもう教職は務まらないと言って自ら退職を願い出たという。
 中村が退職した噂はすぐに広まった。そして、妙子と駆け落ちしようとしていたと噂された。妙子は学校で孤立した。和夫も妙子に話しかけなくなった。和夫は妙子をもう見限っていた。
 ある日、妙子は授業の後、日直だったので黒板を消していた。すると目の前にチョークがあった。ふっと妙子はチョークを見つめる。気がついた時には妙子はチョークを食べていた。同級生達は驚いて悲鳴をあげた。妙子はすぐに保健室に連れて行かれ、家に帰された。
 夜、妙子は布団の中にいたが眠れなかった。起き上がり、スカートのポケットからチョークを取り出し掌に載せ見つめた。今日、保健室に連れて行かれる前に秘かにチョークをスカートのポケットに入れたのだ。妙子はしばらくチョークを見つめると制服に着替えた。そして、夜が明ける前に家を出た。
 夜明け前、高校の校庭で妙子は制服を脱いだ。そして、校庭で制服を焼き下着姿で家に帰った。
 
 妙子は家に帰り着替え、旅行鞄に荷物を詰め込み中村の家に行った。しかし、中村はいなかった。妙子は朝から夜まで玄関で待ったが、中村は姿を現さなかった。妙子は仕方なく歩き始めた。
 橋の上で川の流れを見つめながら、中村の事を想って妙子はチョークを食べた。とりあえず、妙子は駅に向かった。しかし、どこかに行くあてがあるわけではない。とりあえず、終点まで行くことにした。終点は新宿だった。すでに夜も遅く終電である。ホームに行くとベンチに男が一人ぽつんと座っていた。その男は中村であった。
 中村は掌にチョークを乗せ見つめていた。そのチョークの色は妙子が好きだと言った白のチョークだった。妙子は中村にどうしてここにいるのか尋ねた。中村もこの街を捨てて、どこか遠いところに行こうと思っていると話した。妙子は中村に「一緒に行きたい」と話した。しかし、中村は「帰りなさい。先生のようになってはいけない」と言った。妙子は「先生は私の事、好きじゃないの?さっき白いチョークを見て、私を想っていてくれたんじゃないの?」と言い返した。すると中村はいきなりチョークを地面に捨て、足で踏みつぶした。中村は「これが私の答えだ。帰りなさい」と言った。
 しかし、それでも妙子は納得せず地面で砕けているチョークを這いつくばって食べ、「愛している」と言った。中村は妙子の気持ちを受け入れ、一緒に電車に乗り新宿に向かった。