矢沢透「バラエティー・ツアー」(1978年12月5日/東芝EMI EXRESS)
A面
1. スプリング・タイム 作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
2. ホリデイ 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
3. あなたがいるだけで 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
4. 嵐の夜 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:治美平
B面
1. 街のためいき 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
2. ボッサ・デ・スー 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
3. ホップ・スキップ・また明日 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
4. 時の響き 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:鈴木康博
5. サウンド・オブ・スプリング-いつか幸せが- 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
アリスのドラマー・矢沢透(キンちゃん)の今のところ?・・・唯一のソロアルバム。
アリスと言えば谷村新司(チンペイ)、堀内孝雄(ベーヤン)が目立ちますが、キンちゃんを忘れてはいけません。キンちゃんがいてこそのアリスなのです。(ちなみにニックネームのキンちゃんは柳家金語楼に似ているから)
キンちゃんこと矢沢透さんは1949年2月6日神奈川県横須賀市で生まれました。中学2年からドラムを始めたキンちゃんは1965年、ジャズトランペット奏者・中野彰のバンドボーイに採用され、高校を中退して上京します。そして、17歳でジャズ・ドラマーとしてデビューします。
その後、ザ・ピーナッツや布施明のバックバンドを務め、1970年にブラウン・ライスのゲスト・ドラマーとして加入し、米国ツアーに同行します。その時に、関西のフォーク・ロック・バンドのザ・ロック・キャンディーズにいたチンペイさん(谷村新司)と意気投合します。そして、帰国したら一緒に活動することを約束します。
ここまでの経歴をみてもわかると思いますが、実はキンちゃんはアリス以前からプロとして活躍していたのです。
1971年、チンペイさんは神戸の音楽サークルで知り合ったベーヤン(堀内孝雄)を新バンドに誘います。
1971年12月25日、キンちゃんが加入する事を前提に、まずはチンペイさんとベーヤンの2人でアリスは結成されます。翌1972年3月5日、アリスは「走っておいで恋人よ」でレコードデビュー、キンちゃんは同年5月5日から正式にアリスに合流します。
アリスは最初の2年~3年はそんなに売れていませんでした。
売れてからのアリスは多くのバックバンドをつけ、派手なライブをしていますが、初期の頃はそうではありません。
キンちゃんはドラマーなのに、持ち運びが出来るコンガを持ち、チンペイさんとベーヤンはアコースティックギター持って移動するライブ活動が主でした。
1975年「今はもうだれも」のヒットにより、アリスは人気グループになります。その後もアリスはヒット曲を連発していきます。
キンちゃんのソロアルバム「バラエティー・ツアー」が発表された1978年はまさにアリスの絶頂期でした。そして、同時にチンペイさんやベーヤンのソロ活動が活発化し始めていた頃でもありました。
というわけで、キンちゃんもソロアルバムを制作、「バラエティー・ツアー」が誕生します。
「バラエティー・ツアー」は音楽の世界一周がコンセプト。ディスコ、ポップス、ボサノヴァ、フュージョンと何でもありのアルバム。キンちゃんは豊かな音楽性を持つミュージシャンだとわかります。
作詞・作曲も歌もすべてキンちゃん!
それと本作はジャズ・ギタリストの直居隆雄さんの活躍も大きい。
キンちゃんの歌は素人レベルだと言われたりしますが・・・僕はそうは思いません。チンペイさんやベーヤンとは違った味があると思います。キンちゃんの歌声が好きなアリスファンも大勢いると思います。それに歌は心で歌い、心で聴くものです。
A面
1. スプリング・タイム 作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
インストルメンタル。ウキウキするディスコナンバー。
2. ホリデイ 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
たまの休みで、もっと寝たいのにノックの音で起こされる気怠い休日を描く、ラテンナンバー。「Kon Kon~」「Don Don~」と歌ってノックの音を表現していたり、歌詞がユニーク。
3. あなたがいるだけで 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
アリスのライブでも何度も歌われた曲。
スタジオで録音された本作では、いろいろアレンジされていますが、ライブではシンプルなキンちゃんのピアノ弾き語りでした。
キンちゃんってきっと優しい人なんだなっとこの曲を聴くと思います。
4.嵐の夜 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:治美平
ブリティッシュ・ハード・ロック風の激しい曲です。
キンちゃん、かっこいい。
B面
1. 街のためいき 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
初めて聴いた時、「えっ、これキンちゃんの声なの!?」と思ったりしました。
低音でボソボソ歌っていて、何かキンちゃんぽくない。でも、何度も聴くと、何かかっこいいかもと思ってくる不思議な曲。笑
2. ボッサ・デ・スー 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
爽やかな夏の始まりを告げるようなボサノヴァ・ナンバー。
聴いていて、とても気持ちが良くて、個人的にとても好きな曲です。
3. ホップ・スキップ・また明日 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
あえてモノラルで録音された1950年代ポップス風のナンバー。
幼い日、好きな子がいてもなかなか挨拶すらも出来ない場面が描かれています。だけど明日こそは挨拶しようと、この少年はどこか明るい。そんな明日への希望がこの曲からは感じられて、良いですね。
4. 時の響き 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:鈴木康博
編曲がオフコースの鈴木康博さん。
そういえば、キンちゃんって2人時代のオフコースのアルバムでドラム叩いているんですよ。(2人時代のオフコースがアリスのアルバムにコーラスで参加したこともあります)
それと実はキンちゃんね・・・オフコースのメンバーにならないかと勧誘された事も・・・。
5. サウンド・オブ・スプリング-いつか幸せが- 作詞・作曲:矢沢透 /編曲:直居隆雄
派手なオーケストラで歌うキンちゃん。ミュージカル映画で流れるような曲です。
とても明るい気持ちになる曲で、キンちゃんのソロアルバムのエンディングにふさわしい作品です。
CDの時代になってもなかなかCD化されなかった本作。いつしか幻の名盤となっていました・・・。
しかし、ついに2017年8月23日、初CD化され発売されました。
ようやくアリス・第三の男「矢沢透」を再評価する時代が来たのです。