没後20年 藤田敏八 あの夏の光と影は~二十年目の八月「野良猫ロック 暴走集団'71」「赤い鳥逃げた?」

新文芸坐で「野良猫ロック 暴走集団’71」「赤い鳥逃げた?」を観ました。


今年は藤田敏八監督の没後20年になります。
藤田敏八監督作品を観るようになったのは高校時代からでした。それから現在まで僕に最も影響を与え続けている監督といってもいいかもしれません。
藤田敏八監督の独特の作風はハマると何故かクセになりますね~。

 


野良猫ロック 暴走集団’71」(1971年1月3日公開/日活、ホリ企画)

f:id:tomiisan:20170830151759j:plain


監督:藤田敏八
製作:笹井英男、岩沢道夫、真下武雄
企画:佐々木志郎
脚本:永原秀一、浅井達也
助監督:岡田裕
音楽:玉木宏樹
撮影:萩原憲治
照明:大西美津男
録音:杉崎喬     
美術:千葉和彦
編集:丹治睦夫
スチール:浅石靖
出演:原田芳雄梶芽衣子藤竜也地井武男、郷鍈治、久万里由香、范文雀、司美智子、青木信子、戸浦六宏、稲葉義男、常田富士男

 


以前、DVDで観た事あり。今回、劇場で観る事が出来て良かった!

 

野良猫ロックシリーズ5作目であり最終作です。
藤田敏八監督はシリーズ2作目「野良猫ロックワイルドジャンボ」(1970年/日活)も監督しています。(他の「野良猫ロック」シリーズは長谷部安春監督)
それまでの「野良猫ロック」シリーズ4作品は梶芽衣子さんが物語の中心でした。しかし、本作は原田芳雄さんが主役といった感じです。
原田芳雄さんは藤田敏八監督の前作「新宿アウトロー ぶっ飛ばせ」(1970年/日活)に出演しています。そして、引き続き「野良猫ロック 暴走集団’71」に出演という流れになりました。原田芳雄さんは当時30歳でした。

 

 

 

西新宿の空き地。廃バスを根城に暮らすヒッピーの集団がいました。
その中に地方の有力者の息子でドロップアウトしてきたリュウメイ(地井武男)と呼ばれる若者がいました。
ある日、リュウメイが恋人の振子(梶芽衣子)と空き地でじゃれ合っているところを「総統」(郷鍈治)率いるブラックSSに襲われます。リュウメイの父・荒木義太郎(稲葉義男)の差し金で、リュウメイを連れ戻そうとやってきたのです。
このいざこざでリュウメイはブラックSSのメンバー・ヘス(安岡力也)を刺殺してしまいます。
総統は気絶していた振子(梶芽衣子)の手にナイフを握らせ、リュウメイを拉致し連れ去ります。

 

殺人の濡れ衣を着せられた振子は感化院に入れられます。
しかし、リュウメイ会いたさに感化院を妹分のアヤ(久万里由香)と脱走します。

 

一方、ヒッピー仲間のピラニア(原田芳雄)、マッポ藤竜也)、ガッペ(夏夕介)、レモン(司美智子)らは振子を追って、エコロジカルな自転車に乗ってリュウメイの故郷に向かいます。


しかし、振子はすでにリュウメイの父・荒木義太郎(稲葉義男)のもとに捕らえられていました。
そして、リュウメイ(地井武男)は父の「誠心道場」で根性を徹底的に叩き込まれ、父の権力を継ぐ青年・隆明(リュウメイの本名)に豹変していました‐

 

 

 

前半は新宿を舞台にヒッピー達の日常が描かれています。
まだ新宿西口に荒野が広がっていた時代に作られた映画です。ヒッピーライフとともに現在では観る事の出来ない貴重な新宿の風景がフィルムの中に残されています。

 

やがて物語の舞台はリュウメイの故郷である地方都市へ。ロケ地は伊豆。
自由な若者達とよそ者嫌いの地方都市の対立が描かれます。
そこに古い価値観や権力に立ち向かう、当時のある若者の青春像が見えます。

 

連日・連夜、スタッフや出演者達による酒盛りや映画に関するディスカッションが行われたそうです。脚本を書いた永原秀一さんも同行し、現場でどんどん台詞が変更されていきました。 
こうした自由な空気がこの映画の魅力でもあります。1970年という時代の若いエネルギーが溢れているのです。


大好きな作品です。おススメ!

 

あ、それと劇中、突然トラックの荷台でモップスが「御意見無用」を演奏しながら登場します。ムムム、かっこいいぜ。

 

 

 

モップス「御意見無用」

作詞:鈴木ヒロミツ /作曲:星勝 /歌・演奏:モップス


The Mops - Iijanaika (video by Bizu)

 

 

 

 

 

 

 「赤い鳥逃げた?」(1973年2月17日公開/東宝、グループ法亡)

f:id:tomiisan:20170830151823j:plain


監督:藤田敏八
製作:奥田喜久丸
脚本:藤田敏八ジェームス三木
助監督:長谷川和彦
音楽:樋口康雄
撮影:鈴木達雄
照明:江森源二
録音:太田六敏
美術:樋口幸男
編集:井上治
スチール:橋山真己
出演:原田芳雄桃井かおり、大門正明、白川和子、殿山泰司戸浦六宏、内田朝雄、地井武男、青木義朗、佐原健二山谷初男

 


70年代前半の若者の閉塞感を描いた青春映画の傑作。
以前も新文芸坐で観た事あり。あれは原田芳雄追悼上映の時だったか。

 


彷徨する3人の若者の物語。彼らは未来が見えず、人生が面白くありません。
チンピラ青年の宏(原田芳雄)はどこか自分の人生に焦っています。しかし、どうしたら良いのかわからず、行き当たりばったりの生活を送っています。
宏は弟分の卓郎(大門正明)の恋人・マコ(桃井かおり)のもとに転がりこみます。
マコはいきなり上半身裸で登場し、どこか不思議な雰囲気のある女の子。友達の「石黒京子」というブルジョワの娘が外国に行っている間、部屋を借りていると話します。
後半、実はこのブルジャワの娘「石黒京子」はマコだとわかります。
そして、3人はマコが誘拐された事にして、マコの父親から身代金をせしめようと企てますが・・・。

 


宏(原田芳雄)の台詞が印象深い。

 

誰も俺たちを探しちゃいない。
誰も俺たちを待っちゃいない。
このままじゃ俺は29歳のポンコツだ。

 

何もなすことが出来ず、もうすぐ30歳になろうとしている若者の叫び・・・。
この気持ち、何かわかる気がします。僕も29歳なので、以前観た時よりも今回観た時のほうが心にグッときました。
20歳頃は・・・30歳なんて随分と先の事だと思っていました。
しかし、いざ30歳を目前にすると・・・。
う~ん、一体自分は何やっているんだろうと思ったりします。
だから、宏(原田芳雄)の焦燥感が痛いほど伝わってきました。

 

実はこの映画の公開時、原田芳雄さんは30歳を過ぎていました。しかし、この映画のような若者を演じるのが、どこか合っています。
70年代青春映画における原田芳雄さんの存在感は僕に大きな影響を与え続けています。

 

f:id:tomiisan:20170830151903j:plain


タイトルは「青い鳥」じゃなくて「赤い鳥」ですね。
しかも最後に「?」がつきます。どういう意味なのでしょうか。(ちなみに最初のタイトルは「青い鳥を撃て」だったらしい)

 

そういえば、夢占い的には鳥は希望という意味があるそうですね。
そして、赤い鳥は生命力を意味するそうです。

 

タイトル「赤い鳥逃げた?」には自由に羽ばたきたくても羽ばたけない焦燥感があるような気がします。
あえて「逃げた」じゃなくて「逃げた?」なのも、どこか道に迷っている感じがします。

 

赤い鳥の玩具を飛ばすシーンがありますが、すぐに失速して落下してしまいます。その無残さが、この映画の3人の若者を象徴しています。


原田芳雄が劇中でギターを爪弾きながら歌う「愛情砂漠」、安田南が歌う主題歌「赤い鳥逃げた?」など音楽にも注目!

 

 

 

「赤い鳥逃げた?」

作詞:福田みずほ /作曲:樋口康雄 /歌:安田南


赤い鳥逃げた?