シネマヴェーラ渋谷で「徳川女刑罰史」「地獄」を観ました。
「甦る映画魂 石井輝男」という石井輝男監督十三回忌追悼特集です。
60年代後半、岡田茂&天尾完次プロデューサーと石井輝男監督によって大量生産された異常性愛路線の1本。
異常性愛路線によって石井輝男監督は現在カルト的な人気を得ていると言っても良いかもしれません。
東映お得意の見世物映画。エログロ。
こういう映画を企画する人はやっぱり・・・岡田茂&天尾完次。
異常性愛路線は観客に一体何を伝えたいのかと問われても僕にはよくわかりません。
ですが、なかなか人気が高く名画座でわりと上映されたりします。
そして、よくわからないけど何だかんだ面白かったりします。
内容はタイトルからもわかるように、江戸時代、女性に対して行われた刑罰の数々をオムニバス形式で描いています。
一応、人間的で良心的な与力・吉岡頼母(吉田輝雄)とサディスティックな与力・南原一之進(渡辺文雄)が全話を通じての狂言回し的な存在で登場しますが・・・。
ちなみに吉田輝雄さんは第一話では大工の新三と与力・吉岡頼母の一人二役。
第一話
仕事中に怪我をしてしまった大工の新三(吉田輝雄)を妹・おみつ(橘ますみ)は献身的に看護します。
しかし、高額の医療費の工面に困ったおみつ(橘ますみ)はエロ商人(上田吉二郎)に身体を許してしまいます。それを知った新三(吉田輝雄)は怒ります。
実は新三(吉田輝雄)はおみつ(橘ますみ)を妹ではなく女性として愛しています。やがて2人は禁断の関係になり・・・。
第二話
ある日、高貴な血を引く尼僧・玲宝(賀川雪絵)が尼寺にやって来ます。
この尼寺の隣の寺の僧・春海(林真一郎)と尼僧・妙心(尾花ミキ)の秘められた恋を知った玲宝(賀川雪絵)は春海(林真一郎)に横恋慕。
春海(林真一郎)を手に入れる為に玲宝(賀川雪絵)は妙心(尾花ミキ)を様々な拷問にかけます・・・。
第三話
刺青師の彫丁(小池朝雄)は芸者の背中に入れた責め絵の刺青を与力・南原(渡辺文雄)に酷評されます。南原(渡辺文雄)は「苦悶の中の恍惚の表情が描かれていない」と言います。
南原(渡辺文雄)は取り調べと称し、残酷な刑罰を科す鬼のような与力です。
彫丁(小池朝雄)は自分の納得のいく刺青をする為に南原(渡辺文雄)の取り調べの様子を見たいと願い出ます。その願いを南原(渡辺文雄)は聞き入れます。
そして・・・。
という全三話から構成されています。とにかく目を背けたくなるような様々な刑罰が登場します。
残虐な刑罰を平然と罪人に科す南原(渡辺文雄)とは対照的な与力・吉岡(吉田輝雄)が各話の最後に「残酷な刑罰は本当に世の為になるのだろうか」と疑問を呈します。
このナレーションで何やらもっともらしくまとめますが・・・実態はエログロを売り物にした「見世物映画」です。
本作も含め異常性愛路線の作品は当時、バッシングの嵐でした。映画界どころか東映内部でも反撥されていました。
ですが「徳川女刑罰史」の興行収入は良く、岡田茂&天尾完次プロデューサーの指揮のもと異常性愛路線の作品は量産され続けたのでした。
「地獄」(1999年/石井輝男プロダクション/監督:石井輝男)
「生きるも地獄、死するも地獄、平成日本の闇を斬る」(映画のキャッチコピーより)
石井輝男監督が晩年に放った超過激な問題作。
実在の極悪な犯罪者達をモデルにした人物が地獄で責めを受けます。
ノコギリ引きの刑に処される連続幼女殺害のT・M、糞尿の刑に処される毒物カレー事件のM・Hなども登場しますが、本作の大半を占めるのはオウム真理教の事件の話です。映画の中では宇宙真理教となっていますが、明らかにオウム真理教とわかります。
石井輝男先生、怒っています。
何が言いたいのかよくわからない作品が多い石井輝男監督作品ですが、本作からは「怒り」のメッセージが伝わってきます。
オウム真理教はもちろん、彼らをかばう発言をした「知識人」に対しても石井輝男監督は怒りの鉄槌を下します。容赦なく地獄送りにする石井輝男監督の本気度に驚愕する作品です。
「石井輝男」を怒らせると怖いのだ・・・。
ですが、本作を観ると石井輝男監督の怒りはもっともだと思います。確かに描かれている凶悪事件には怒りを覚えますね。
石井輝男監督はただ変な映画ばかり撮っている監督ではないのです。実は正義感溢れる熱血漢なのですよ。
人生に悩む18歳の少女・リカ(佐藤美樹)はある夜、公園で出会った老婆(前田通子)に「あなたの悩みは全部わかっている。私はあなたの救世主。このままではあなたの人生は破滅」と言われます。
リカは特別に生きたまま地獄を見られる選ばれた人間・・・という事で地獄に連れて行かれます。そこで、老婆そっくりの閻魔大王と対面します。
まず、連続幼女殺害のM・Tの過去・現在・未来を見せられショックを受けます。
そして、次はリカの過去・現在・未来を見せられる事に・・・。
リカは実は宇宙真理教に入信しています。しかし、今は宇宙真理教に対して疑心暗鬼になっています。
という感じで物語は宇宙真理教(オウム真理教)の話になっていきます。教祖、激似です。誰が見てもモデルが誰かわかると思います。
1950年代、新東宝の大スターで日本映画初のヌードを披露した事で有名な前田通子さんが42年ぶりに映画出演しました。
しかし、何故かその役が閻魔大王。
宇宙真理教(オウム真理教)の悪事に気づいたリカ(佐藤美樹)は自らの過ちに気づき、現世に帰る事になります。
ところが帰る直前・・・。
何故か唐突に丹波哲郎先生、登場!!!
もちろん、劇場内では笑いが・・・。
皆さま、丹波哲郎先生の活躍にも注目です。