追悼・渡瀬恒彦 銀幕に刻まれた不死身の役者魂「波光きらめく果て」「時代屋の女房」

新文芸坐で「波光きらめく果て」「時代屋の女房」を観ました。今年3月に亡くなった渡瀬恒彦さんの追悼上映です。

 

「波光きらめく果て」(1986年/松竹/監督:藤田敏八

以前、神保町シアターで観た事あり。心と体の赴くままに愛を求める女性を描いており、主人公・羽季子を松坂慶子さんが演じています。

渡瀬さんは羽季子と不倫関係になる高校教師・敦巳という役を演じています。

大人の恋愛映画・・・という感じでしょうか。

 

羽季子(松坂慶子)は夫の部下・今泉(奥田瑛二)と不倫関係なり、夫・透(峰岸徹)と離婚。今泉は会社を辞め、郷里の越後に帰ります。

羽季子は雪の越後湯沢で今泉の心を試そうと薬を飲み、自殺未遂を起こします。しかし、今泉の心は羽季子のものにはならず、一昼夜の長い眠りから覚めた後、母・富栄(加藤浩子)が壱岐から来ていました。富栄は羽季子を壱岐に連れ帰ります。

 

羽季子(松坂慶子)は母・富栄とその兄・武弥(三國連太郎)と壱岐で暮らす事になります。武弥は羽季子を立ち直らせようと羽季子に対して厳正な態度をとります。

武弥の娘・浩子(大竹しのぶ)と羽季子は幼い頃から姉妹のように仲が良く、浩子は高校教師・敦巳(渡瀬恒彦)と結婚し、近くに住んでいます。以前は羽季子と透(峰岸徹)、浩子と敦巳の4人で海で休暇を過ごしたりしていました。

 

敦巳(渡瀬恒彦)は浩子(大竹しのぶ)と正反対の性格の羽季子(松坂慶子)に惹かれている自分を感じ、あえて戻って来た羽季子とは会わないようにしていました。しかし、ある日羽季子が何気なく敦巳のいる学校に足を向けます。その日をきっかけに2人はドライブをするようになり、ふっとしたことで2人は屏風岩のある海で抱き合ってしまいます。こうして2人の密会が始まります。しかし、やがて2人の関係は周りに知られるようになり・・・。

 

羽季子(松坂慶子)は別に悪い人じゃないんです。自分に正直にしか生きられないタイプで、それゆえに周りの人達を傷つけてしまいます。無邪気で自由奔放な羽季子に男達は無意識に誘惑されてしまうのです。

敦巳(渡瀬恒彦)も羽季子には危ういものを感じつつも、羽季子に溺れてしまいます。

 

敦巳の妻・浩子(大竹しのぶ)は薄々、羽季子と敦巳の関係に気づいています。そして夫への不信感から、だんだんおかしくなっていきます。「貝から剥がしても生きているのかな」と言って生きたアワビを剥がしまくるという奇行シーンが印象に残ります。

 

70年代はやんちゃな兄ちゃんという感じの渡瀬さんでしたが、80年代になると渋い大人の男になっていますね。んー、かっこいい。

 

 

 

 

 

時代屋の女房」(1983年/松竹/監督:森崎東

以前、新文芸坐で「森崎東監督特集」の時に観た事あり。主演の渡瀬さん、夏目雅子さんの代表作の1本。舞台となった骨董店「時代屋」は当時、大井町駅近くの大井三ッ又交差点の一角にあった実在の骨董店。ほんとの「時代屋」でロケして撮影しています。

残念ながら現在、時代屋の建物はすでに取り壊されています。

 

東京・大井で安さん(渡瀬恒彦)と呼ばれる男が「時代屋」という骨董屋を営んでいます。安さんは35歳でまだ独身です。

ある夏の日、野良猫を抱え、日傘を差した真弓(夏目雅子)という女が突然やって来て「時代屋」に居ついてしまいます。

 

一緒に暮らすようになっても真弓(夏目雅子)の過去は謎です。理由もなく突然いなくなり、数日経つと何事もなかったかのようにふらりと戻ってくるという事を繰り返します。

この映画は取り残された安さん(渡瀬恒彦)が真弓(夏目雅子)を探す物語であり、不思議な恋愛ファンタジー映画です。

 

さらに真弓がいない間、真弓と瓜二つの女・美郷(夏目雅子)が現れます・・・。

 

この映画には安さんと真弓以外にも様々な男女のエピソードが登場します。個人的に印象に残っているのはクリーニング屋の主人(大坂志郎)とそのおかみさん(初井言栄)のエピソードです。

おかみさんが「時代屋」に持ち込んだトランクから昭和11年2月26日の未使用の切符が出てきます。そこからクリーニング屋の主人の過去が明らかになるんですが、何と若い頃に年上の女性と駆け落ちしようとした事があると判明。駆け落ちするつもりで当日、駅に行ったら父親に連れ戻されて失敗、トランクはその時の想い出の品物だったのです。

トランクを買い戻し、青春を取り戻した主人はウキウキ。しかし、その後、故郷に帰った時に駆け落ちの女性に再会しますが・・・。すっかりお婆ちゃんになった相手を見てションボリ・・・。

 

それにしてもミステリアスな女性・真弓を演じた夏目雅子さんが良いですね。浮世離れしている存在なんですが、そこがまた良い。夏目雅子さんの魅力いっぱいの作品。

 

それと猫のあぶさんの名演(?)にも注目!