新文芸坐で「現代やくざ 血桜三兄弟」「ゾロ目の三兄弟」を観ました。今年3月に亡くなった渡瀬恒彦さんの追悼上映です。「追悼・渡瀬恒彦 銀幕に刻まれた不死身の役者魂」という特集を5月20日(土)~30日(火)まで開催中です。
「現代やくざ 血桜三兄弟」(1971年/東映/監督:中島貞夫)
以前、シネマヴェーラ渋谷で開催された「荒木一郎特集」の時に観た事があります。個人的にその時印象に残っている作品で、今回再見して改めてこの映画は傑作だと思いました。
武(菅原文太)、邦夫(伊吹吾郎)、宏(渡瀬恒彦)が血桜三兄弟。武と邦夫が実の兄弟、宏は邦夫の兄弟分という間柄。
武(菅原文太)は元・やくざで今はカタギでバーのマスター。胃癌で余命いくばくもなく、厭世観を抱いています。大学出のインテリで組織に嫌気がさしたインテリヤクザという役どころ。
武とは対照的に弟の邦夫(伊吹吾郎)は広道会のメンバーで組に忠誠を誓っています。
邦夫の弟分、宏(渡瀬恒彦)も広道会のメンバーで競馬のノミ行為のアガリを組に納めています。
冒頭、大阪の大組織・誠心会から川島(小池朝雄)が鉄砲玉として広道会の縄張りである岐阜に乗り込んできます。川島は開戦のきっかけを作る為、やりたい放題暴れます。小池朝雄さん演じる川島はカリスマ性があって、前半の活躍ぶりは凄まじい。
広道会の邦夫(伊吹吾郎)は今のうちに川島を叩いておくべきだと組に進言します。しかし、面倒を起こしたくない広道会は腰をあげません。邦夫は賭場を荒らされても何もしない親分に不信感を抱きます。邦夫は弟分の宏(渡瀬恒彦)と結託して川島をバラそうと決意します。
一方、武(菅原文太)も広道会から川島をバラすように依頼されます。
それぞれ、川島(小池朝雄)の命を狙いますが・・・川島は三兄弟ではなく、意外な人物に殺されます。何とそれは「モグラ」というあだ名で呼ばれる情けな~い陰気な男・信男(荒木一郎)だったのです。
モグラはバーで働いていて、宏と仲が良い。このモグラ(荒木一郎)と宏(渡瀬恒彦)の登場回数は多く、武(菅原文太)や邦夫(伊吹吾郎)よりも多いんじゃないかと思うくらいです。
この映画、主役である三兄弟よりも荒木一郎さん演じるモグラがおいしいところを持っていきます。笑
ストリップを見て、興奮してぶるぶる震えるモグラ。好意を寄せる女の子・君枝(早乙女ゆう)の事を思ってオ〇ニーしたり・・・。風俗で童貞捨てて、気が大きくなったり・・・。殴り込みの前、緊張のあまり大声あげておしっこしたり・・・。(結局、殴り込みには不参加)
モグラを演じる荒木一郎さんは主役である三兄弟を喰ってしまうほどの存在感を発揮しています。あゝ・・・恐るべし、荒木一郎。
鑑賞後、ラストに流れる野坂昭如が歌う「マリリン・モンロー・ノーリターン」が耳に残り、響き続けます。大好きな作品です。必見。
あまり覚えていなかったけど、以前、新文芸坐で観た事あり。何の時だったかな・・・渡哲也・渡瀬恒彦兄弟特集の時だった気がする・・・。
昭和28年(1953)頃の大阪が舞台。同じ女に惚れたり、内輪揉めばかりしている暴れん坊の三兄弟が、故郷に進出しようとしている悪企業に戦いを挑みます。小林旭、田中邦衛、渡瀬恒彦が主役である三兄弟を演じています。3人ともケチで喧嘩早く、スケベな性格をしています。
渡瀬さんは三兄弟の末弟で船員として働いている永三という役を演じています。三兄弟が惚れたヒロインをゲットするのは渡瀬さん演じる末弟。それなのに「嫁はんは他人。兄貴は兄弟やないけ!」と言ってラストの殴り込みに合流する渡瀬さん。かっこいい~。
渡瀬さんは1970年、「殺し屋人別長」(東映/監督:石井輝男)でデビューしました。しかも、主役で。スターですね~。デビュー当時はやんちゃで突っ走っていたそうです。
晩年は性格俳優という感じになりましたが、若い頃はアクション俳優という感じでしたね。今回観た「ゾロ目の三兄弟」(1972年)も若い渡瀬さんのアクションがみられます。
当時、スターがひしめく東映の中で「何とかしなければとのたうちまわっていた」と回想している渡瀬さん。
70年代初頭の東映のスターといえば・・・高倉健、菅原文太、鶴田浩二、若山富三郎、安藤昇、小林旭、松方弘樹、千葉真一、梅宮辰夫・・・何となく頭に浮かんできた人達を書いてみましたが・・・うわぁ・・・すごい人達。ぶるぶる。
アクション俳優としての渡瀬さんの代表作はやっぱり「狂った野獣」(1976年/東映/監督:中島貞夫)と「暴走パニック大激突」(1976年/東映/監督:深作欣二)かな。ほんとに渡瀬さんのアクションが熱くて、かっこいい。
僕は装飾部時代、「警視庁捜査一課9係」(2015年)の現場に行っていたのですが、その時に渡瀬さんに会いました。雲の上の存在と思っていたので話しかけるのもちょっと・・・というわけであまり話した事はないです。
とてもステキな方で、やっぱり「スター」というオーラがありました。亡くなった時はショックでしたね・・・。
今回の特集で渡瀬さんを偲び、その役者魂を感じたいと思います。