抗争と流血-東映実録路線の時代-「沖縄10年戦争」「北陸代理戦争」

最近観た映画の話。シネマヴェーラ渋谷で「沖縄10年戦争」「北陸代理戦争」を観ました。「抗争と流血-東映実録路線の時代」という特集上映が4月1日(土)〜21日(金)まで開催中です。

 

上映前に「北陸代理戦争」に出演していた女優・高橋洋子さんのトークショーがありました。エヴァンゲリオン歌っている人じゃないですよ‼「旅の重さ」「サンダカン八番娼館 望郷」などに出演していた人ですよ‼
「北陸代理戦争」や松方弘樹さんの事、自身が関わってきた映画や監督達の事など貴重な話を聞く事が出来て良かったです。

 

「沖縄10年戦争」(1978年/東映/監督:松尾昭典
沖縄を舞台にしたやくざ映画。第四次沖縄抗争がモデルらしいです。
当時、沖縄から猛反発をくらい、ロケも上映もボイコットされた作品です。

 

沖縄の言葉でヤクザの事を「アシバー」と言います。映画の中でもアシバーと言っていますが、基本的にセリフはバリバリ共通語です。沖縄の方言は難しい・・・ということなのでしょうか・・・。


この映画は金城(松方弘樹)と伊庭朝勇(千葉真一)、伊庭朝市(佐藤允)という幼馴染であるアシバ―(沖縄やくざ)3人を中心に沖縄の抗争を描いています。

 

沖縄戦のシーンからこの映画は始まります。沖縄戦が激化する中、幼い金城と伊庭兄弟は出会います。わずかに残った食料(芋)を食べていた時・・・日本兵が現れます。そして、食料を奪われてしまいます。3人はこの時の経験を本土への怒りとして持ち続けます。そして、戦後3人はアシバ―(沖縄やくざ)として頭角を現していきます。

 

本土復帰(1972年)、そしてその後の沖縄海洋博(1975年)の利権をめぐり、本土のやくざが進出してきます。この本土やくざの進出を防ぐ為にアシバ―達は団結、沖縄総連琉栄会を結成します。ところが、この中には2つの大きな派閥がありました・・・。
こうして、会長や金城を中心とした首里派と伊庭兄弟を中心とした胡屋派に分かれ対立、抗争化していきます。さらに本土のやくざ達も介入し・・・。

 

朝市(佐藤允)は途中で殺され、最後は金城(松方弘樹)と朝勇(千葉真一)の対決になります。
千葉ちゃんは髭ボーボーでジャンパー姿のワイルドな役です。家族思いで、妻子がいるのですが、抗争で家に手榴弾を投げられ、妻を亡くします・・・。
千葉ちゃんのアクションはもちろん良いのですが、この役はそれ以外にも人間味ある部分が描かれていて良いなと思いました。

 

ラストシーン、小舟で海へと脱出する朝勇(千葉真一)の背中に金城(松方弘樹)はライフルの照準を合わせます。果たして、その結末は・・・。

 

 

 

「北陸代理戦争」(1977年/東映/監督:深作欣二
この映画で松方弘樹さんが演じる川田登という役は「北陸の帝王」と呼ばれた福井の川内組・川内弘組長をモデルにしています。そして、この映画のクランプアップから約1ヶ月半後の4月13日、モデルである川内組長射殺事件が起きます・・・。映画と現実の抗争が連動、影響を与えた恐ろしい作品です。

 

ということもあってか実録路線は終焉へと向かい、深作欣二監督も本作をもって実録路線から撤退していきます。深作欣二監督の「仁義なき戦い」(1973年)から始まったと言われる実録路線が、同じ深作欣二監督の「北陸代理戦争」で終焉していくというのは何といいますか・・・歴史とは不思議だなぁと思ったりします。

 

本作は当時、進行中だった抗争を映画化しています。当然、いろいろ干渉を受けますが・・・さすがは東映のワンマン社長として有名な岡田茂社長。映画の製作を強行しました。そして、本作の映画製作が原因でモデルであるやくざ達を刺激・・・。川内組長射殺事件(三国事件)へと発展します・・・。

 

本作の撮影は1977年1月から2月との事・・・同年2月26日には封切っています。早いですよね・・・。しかもこの映画、他にも様々なアクシデントがありました・・・。

 

実はこの映画、東映のヒットシリーズ「新・仁義なき戦い」の一編として制作する予定でした。ところが、菅原文太兄貴が降板・・・。というわけで別の作品として製作される事になりました。

 

さらに・・・撮影中、渡瀬恒彦さんが自動車事故により重傷・・・降板。渡瀬さんの役は伊吹吾郎さんになりました。

 

そんないわくつきの作品として東映実録路線の極北として君臨しているのが「北陸代理戦争」なのです・・・。

 

この映画は命乞いをする黄門様・・・じゃなくて西村晃さん演じる安本組長が雪の中に首だけ出ている状態で生き埋めにされているところから始まります・・・。しかも、松方兄貴演じる川田はジープでその周りを大暴走・・・。安本組長は川田の親分・・・。川田は約束を守らない安本組長に対して牙を剥き・・・雪の中に生き埋めにして脅し、競艇場の利権を奪い取ります。


ちなみに高橋洋子さんのトークショーによると西村晃さんはドラム缶の中に入って首だけだし、その周りを雪で埋めているとのことです。
それと・・・渡瀬さんはこのシーンで事故を起こしたそうです・・・。このシーンの撮影は初日ではなく、何日か経っていたらしいです。というわけで渡瀬さんは降板・・・伊吹吾郎さんに変更になり、撮り直し・・・。スケージュールがぐちゃぐちゃになったそうです・・・。

 

さて、川田に怯えた安本組長(西村晃)は弟分・万谷(ハナ肇)を介して大阪浅田組・金井(千葉真一)に相談します。こうして手打ちの仲介を名目に金井は北陸進出を図ります。こうして地元やくざと他のやくざも巻き込んでの抗争に・・・。

 

救いのない物語なんですが、西村晃さんとハナ肇さんの存在がこの映画に笑いを与えています。意外(?)にコメディーぽいところがあって、あまり暗い気分ばかりにならないで観られるのは、この2人の素晴らしい芝居のおかげです。

 

高橋洋子さんは金井組組員の仲井隆士(地井武男)の妹・信子という役で、川田(松方弘樹)に同情し結婚する女性の役です。ピュアで気性の激しい役で、いろいろな経緯があって兄を刺し殺すシーンでは・・・実は発熱していて大変だったらしいです。
やくざ映画というと男性中心の物語になりがちですが、この映画は高橋洋子さんや野川由美子さんの存在によって女のドラマも描かれています。

 

権謀術数にも長け、手段を選ばず狂犬のように暴れまわる松方兄貴・・・。うーむ、さすがの貫禄です・・・。

 

ってか、松方兄貴、脅す時に相手を雪の中に首だけ出して生き埋めにするの好きですね・・・。冒頭のシーンだけじゃなくて、中盤にもラストシーンにもある。またかっ!って思わず笑ってしまいました。

 

ラストに流れるナレーションが印象的。
「俗に北陸三県の気質を称して越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師と言うが、この三者に共通しているのは生きる為にはなりふり構わず、手段を選ばぬ特有のしぶとさである」

 

・・・こんな事言って北陸の人、怒らないのかな・・・。

 

それはそうと・・・この映画は北陸という設定を生かす為か、やたら雪ばかり。雪の中に生き埋めにするのも北陸という地域性を生かしていますね。

 

というわけで「北陸代理戦争」という作品はいわくつきの怪作として日本映画史に残る作品です。必見です。